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巣状分節性糸球体硬化症の腎移植後再発の病因が抗ネフリン抗体である可能性を解明

東京女子医科大学は2月6日、北海道大学と東邦大学との共同研究により、抗ネフリン抗体が巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)の腎移植後再発の病因である可能性を解明したと発表しました。

巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)は、難治性ネフローゼ症候群の一つで、一部の糸球体が硬くなり、重度のタンパク尿、高血圧、腎機能障害、浮腫などが現れる希少難病です。ステロイドによる治療をおこないますが、症状の改善が見られず、末期の腎不全に進行します。腎移植をした場合にも、高確率で再発すると言われています。腎移植後の再発の病因として患者さんの血液中に存在する蛋白尿惹起液性因子(液性因子)の可能性が推定されていましたが、現在まで液性因子は同定されていません。

ネフローゼ症候群の発症は、糸球体濾過障壁を構成するポドサイトの異常によるものですが、ステロイド反応性ネフローゼ症候群の一部でポドサイトの足突起間に存在するスリット膜を構成する蛋白であるネフリンに対する自己抗体の関与が報告されました。

画像はリリースより

これまで研究グループは、腎移植後に巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)を再発した患者さん1例から、抗ネフリン抗体が再発の液性因子である可能性を示しました。また、抗ネフリン抗体が液性因子である可能性を検証するために、定量的に血液中の抗ネフリン抗体を測定するシステム(ELISA)を確立しました。

今回、研究グループは、小児期発症の巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)により末期腎不全になり、腎移植を受けられた日本人患者さんの中から、移植後FSGS再発11例、移植後FSGS非再発3例、遺伝性FSGS9例を対象として解析を実施しました。

ELISAによる血液中の抗ネフリン抗体価と、二重蛍光免疫染色による移植腎生検組織の観察の2つの項目を解析した結果、抗ネフリン抗体価は、移植後FSGS再発例の全例でカットオフ値以上でしたが、移植後FSGS非再発例と遺伝性FSGSは全例カットオフ値以下(陰性)でした。

画像はリリースより

移植腎生検組織では、移植後FSGS再発例の全例で、1h生検及び再発中の移植腎生検検体でネフリンと共局在する点状のIgGの沈着を認めました。一方で、腎移植後FSGS非再発例と遺伝性FSGSの移植腎生検検体では、IgGの沈着を認めませんでした。また、腎移植後FSGS再発症例の1h生検または再発中の移植腎生検検体で、リン酸化ネフリンとShcAの発現の亢進を認めました。

画像はリリースより

さらに、移植後FSGS再発例では、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)が寛解(蛋白尿が消失)した患者さんの血清の抗ネフリン抗体価は、再発中に比べて有意に減少していました。

画像はリリースより

また、移植後FSGS再発例の寛解後の移植腎生検では、IgGの沈着が消失し、リン酸化ネフリンやShcAの発現は寛解後に低下し、足突起も正常化していることを確認しました。

画像はリリースより

以上の結果より、抗ネフリン抗体が腎移植後の巣状分節性糸球体硬化症の再発の病因(液性因子)である可能性を見出しました。今後は、抗ネフリン抗体の除去(血漿交換療法や免疫吸着療法)や抗ネフリン抗体の産生抑制(ステロイド、カルシニューリン阻害薬、ミコフェノール酸モフェチル、リツキシマブなど)を、患者さん個々の抗ネフリン抗体レベルに応じて予防的治療も含めた治療を行うことが可能となりました。

東京女子医科大学は「現在は更に、抗ネフリン抗体産生の背後にある免疫異常の解明に取り組んでいます。ここで免疫異常が解明されるとすれば新たな治療法の開発に繋がるものと医療界から大きな期待が寄せられています」と述べています。

出典
東京女子医科大学 プレスリリース

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