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ISRIBによる細胞内のストレス応答抑制メカニズムを解明

理化学研究所(理研)をはじめとする国際共同研究グループは、低分子化合物ISRIBが細胞内のストレス応答を抑える仕組みを解明したと発表しました。ISRIBは脳損傷のモデルマウスなどで神経保護効果が報告されており、本研究成果は神経変性疾患の治療法開発 に繋がると期待されています。

ヒトだけでなく、真核生物の細胞では熱や紫外線、放射線、ウイルスの感染といったストレスに対し統合的ストレス応答(ISR)経路が共通に働くことが知られています。一方で、神経変性疾患では慢性的にISR経路が働くために神経の細胞死が起きていることも知られています。脳損傷のモデルマウスにおいて、ISR経路を抑制するISRIBと呼ばれる低分子化合物の投与が神経保護効果を示すことが示されました。ISRIBは細胞内でeIF2Bという翻訳開始真摯に結合し、通常は翻訳開始を促進しますが、ストレス下では反対にeIF2Bによる非リン酸化eIF2の活性化が阻害されます。

研究グループはISRIBがeIF2Bの活性およびISR経路に与える影響を解析し、ISRIBがeIF2Bの活性を高める効果はISRIB単独ではほとんど起こらず、阻害因子のリン酸化eIF2による阻害eIF2Bの活性阻害の際にのみその効果が観察されることを示しました。次に、ISRIBの作用をより詳細に解明するため、立体構造解析を行いeIF2Bとリン酸化eIFの2複合体が取り得る複数の状態の構造およびeIF2B単体の構造を明らかにしました。解析の結果、1つのeIF2Bに対し2分子のリン酸化eIF2が結合した構造でのみ、eIF2Bのサブユニットの位置関係に変化が生じていました。本研究結果よりISRIBはストレス下でeIF2Bの構造変化を妨げ細胞のストレス応答を抑制していることが明らかになりました。ISRIBの作用機序理解は、神経変性疾患に対する新たな治療薬開発に繋がると期待されています。

出典元
理化学研究所 研究成果

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