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遺伝的個体差がミクログリアに影響を与え、ALSの病態進行に関与

名古屋大学は1月30日、筋萎縮性側索硬化症(ALS)モデルマウスにおいて、遺伝的個体差に由来する全身の免疫環境などの違いが脳内免疫担当細胞であるミクログリアの細胞集団構成や神経保護性の疾患関連ミクログリア(Disease-associated Microglia:DAM)の出現誘導に影響を与えることにより、病態進行を変化させることを新たに発見したと発表しました。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動を司る運動神経細胞が選択的に傷害されて変性し、手・足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉が徐々にやせて、力がなくなっていく神経変性疾患です。人工呼吸器を使わない場合、発症から2〜5年で死亡します。現在、根本的な治療法が確立されていないため、早急な病態解明および治療法の開発が望まれています。

近年のシングルセル遺伝子発現解析の発展により、ミクログリアは、均一な集団ではなく、さまざまな特徴を持つ集団から構成される不均一なものであり、脳の発達期や成熟期から老年期だけでなく、筋萎縮性側索硬化症(ALS)においてもその構成が大きく変化することが示唆されていました。しかし、遺伝的個体差がこれらのミクログリアの細胞集団構成や筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態に与える影響については、明らかになっていませんでした。

今回、研究グループは、遺伝的に異なる実験マウス系統であるC57BL/6系統(B6)とBALB/c系統(Balb)のマウスを用いて2種類の筋萎縮性側索硬化症(ALS)モデルマウス(ALS(B6)、ALS(Balb))を作製し、両者を比較しました。ミクログリアのシングルセル遺伝子発現解析の結果、両者では、ミクログリアの細胞集団構成が異なることを発見しました。また、ALS(Balb)のミクログリアは、細胞数が減少することが分かりました。

画像はリリースより

次に、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態に与える影響を調べるため、筋萎縮性側索硬化症(ALS)モデルマウスの系統をC57BL/6系統(ALS(B6))からBALB/c系統(ALS(Balb))に変化させた検証しました。その結果、発症期に差は見られませんでしたが、ALS(Balb)では、ミクログリアの細胞数の減少や神経栄養因子を産生するDAMの出現誘導が減弱し、ALS(B6)に比べ、生存期間を短縮させ、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態の進行が加速することを発見しました。

画像はリリースより

病態の進行が加速した原因を解明するため、ALS(Balb)で出現誘導が弱かったDAMの遺伝子発現を調べたところ、筋萎縮性側索硬化症(ALS)において神経保護的に機能することが知られている神経栄養因子であるIGF-1を強く発現していることがわかりました。

画像はリリースより

さらに、遺伝的個体差に由来する全身の免疫環境などが脳内のミクログリアの細胞集団構成に影響を与えている可能性を示唆するデータが得られました。

画像はリリースより

以上の研究成果より、遺伝的個体差に由来する全身の免疫環境などの違いが脳内のミクログリアの細胞集団構成や神経保護性のDAMの出現誘導に影響を与え、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態進行を変化させることが明らかとなりました。ミクログリアの細胞集団構成や神経保護性のDAMの出現誘導に関与する免疫環境因子などに着目することで、新規バイオマーカーの同定や個別化医療の創出にもつながることが期待できるといいます。

なお、同研究の成果は、米国科学雑誌『iScience』に1月11日付で掲載されました。

出典
名古屋大学 プレスリリース

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