PIポリアミドがリピート伸長病の新しい創薬基盤になることを発見
熊本大学は9月27日、「ピロール・イミダゾール(PI)ポリアミド」がリピート伸長病の新しい創薬基盤になることを発見したと発表しました。
リピート伸長病は、特定のDNA塩基配列の繰り返し(リピート配列)が異常に伸長することで引き起こされる疾患群の総称であり、多くは神経・筋に病変をきたす難病です。リピート伸長病の代表的な疾患として、ハンチントン病や脊髄小脳変性症、筋強直性ジストロフィー1型があります。これまで、リピート伸長病に対する化合物による薬理学的治療・幹細胞を用いた治療・遺伝子治療の開発などが進められていますが、有効な治療薬は見つかっていません。
PIポリアミドは、任意のDNA配列に最適化して合成することができ、標的とするDNAの副溝に対して特異的に結合します。今回の研究では、PIポリアミドのひとつである「CWG-cPIP」による、ハンチントン病および筋強直性ジストロフィー1型患者由来細胞と各疾患モデルマウスにおける神経機能の低下に対する改善効果が見られるか、薬理学的に解析をおこないました。
その結果、CWG-cPIPは、各疾患細胞およびモデルマウスで観察される病原性因子の産生を阻害し、神経機能の低下を劇的に抑制することが明らかになりました。
CWG-cPIPの注目すべき点は、これまでのリピート伸長病に対する治験薬では達成できなかったドラッグデリバリー技術を必要とせず細胞核内へ移行する「高い細胞膜透過性」、細胞毒性およびオフターゲット効果が極めて低い「高い安全性」、疾患特異性を発揮する「リピート長依存性」を示したことです。
リピート伸長病の発症要因は、ハンチントン病や筋強直性ジストロフィー1型などのCAG/CTGリピート伸長だけでなく、疾患毎に異なる3~6塩基の様々なリピート配列の異常伸長です。PIポリアミドは、標的とするDNA配列に合わせてピロールとイミダゾールの配置を変えて設計することで、標的となる遺伝子に優先的に結合する高い汎用性を備えています。したがって、PIポリアミドはリピート伸長病の疾患に合わせて設計可能であり、疾患毎にテーラーメイド医療を実現できる創薬基盤となります。
なお、同研究の成果は、米国医学研究雑誌オンライン版「The Journal of Clinical Investigation」に、9月14日付で掲載されました。