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好酸球性副鼻腔炎の病態にフソバクテリウム菌の減少が関連

福井大学と筑波大学の研究グループは9月26日、好酸球性副鼻腔炎(難治性副鼻腔炎)の病態の原因の一つとして、Fusobacterium nucleatum菌の減少が疾患と関連していることを見出したと発表しました。また、細菌叢がもつ機能解析を行ったところ、好酸球性副鼻腔炎においてリポ多糖(LPS)が減少していることを世界で初めて見出し、さらに、好酸球性副鼻腔炎に減少していたFusobacterium nucleatum菌が産生するLPSによる2型炎症の抑制効果を確認したと公表しました。

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)は、12週以上続く鼻づまりと特徴とする疾患です。そのうち好酸球性副鼻腔炎は、2型炎症と呼ばれる特徴を持つ難治性の慢性副鼻腔炎であり、多数の鼻腔ポリープができることによって鼻づまりと嗅覚低下が現れます。成人から発症し、気管支喘息や鎮痛薬アレルギーを合併する場合が多く、治療には、ステロイドの内服が用いられ、一時的に奏功しますが、長期使用による副作用が問題となります。手術をおこなっても、5年のうちに再発する患者さんが約半数います。疾患の病態は未だ不明であり、基礎研究とともに新規治療法の研究が望まれています。

これまで研究グループは、疾患の原因としてライフスタイルの変化などの環境的な要因があるのではないかと考えていました。近年、ヒトと共存する常在細菌叢(マイクロバイオーム)の重要性についての報告が多く、特に消化管や皮膚疾患では免疫系疾患との関連などが多数報告されています。免疫疾患の一つである好酸球性副鼻腔炎についても鼻腔内のマイクロバイオームと関連しているのではないかと考え、今回鼻腔マイクロバイオーム研究に至ったといいます。

同研究では、鼻副鼻腔の手術を受けた143名(好酸球性副鼻腔炎患者65名、非好酸球性副鼻腔炎患者45名、その他の手術患者33名)の患者さんを対象に、鼻の中のぬぐい液を採取し、細菌由来DNAを抽出し、次世代シークエンサーにて測定し解析しました。さらに、細菌由来代謝産物を用いてヒト気管上皮細胞に対する反応を検証しました。

その結果、好酸球性副鼻腔炎は非好酸球性副鼻腔炎のマイクロバイオームは異なることが明らかになりました。また、好酸球性副鼻腔炎では、Fusobacterium(フソバクテリウム)菌が最も減少していました。Fusobacterium nucleatum菌はLPSを産生する菌種として広く知られています。

画像はリリースより
画像はリリースより

そこで、Fusobacterium nucleatumを培養し、精製したLPSを用いてヒト気管上皮細胞への働きについて検討したところ、Fusobacterium nucleatum由来のLPSが減少していることで保護的なはたらきが欠落し、発症原因となっている可能性が示唆されました。

福井大学と筑波大学はプレスリリースにて「今後は、鼻腔マイクロバイオームを改善させることによる好酸球性副鼻腔炎の治療効果を検証し、生活習慣の予防やプロバイオティクスなど新規治療薬の開発へと繋げたいと考えています」と今後の展望について述べています。

なお、同研究の成果は、アレルギー・免疫関係の米国科学雑誌「The Journal of Allergy and ClinicalImmunology」オンライン版に、9月26日付で掲載されました。

出典
筑波大学 プレスリリース

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