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ヒトiPS細胞から腎臓のもととなる組織の作出に成功

京都大学iPS細胞研究所の研究グループはヒト由来iPS細胞より、実際の組織を模した尿管芽組織を作成したことを発表しました。さらに尿管芽組織より、先天性の腎疾患の病態を再現できました。こうした研究により、尿管芽細胞が集合管に分化するメカニズムの解明や、先天性腎疾患の病態解明および治療法の開発にも繋がると期待されています。

背景-先天性腎疾患の病態モデルの必要性

哺乳類の腎臓を細かく見ていくと、腎単位 (ネフロン) と呼ばれる小さな部品のかたまりからできています。ネフロンは後腎間葉と尿管芽の相互作用によって形成され、そのうち尿管芽は先端部細胞と幹部細胞から構成されることが明らかになっています。尿管芽が分裂し成熟することで集合管や尿管、膀胱の一部などを形成します。これらの組織は無数のネフロンで作られた尿を集め、排泄するための非常に重要な機構です。多嚢胞性異形成腎 (MCDK) は先天性腎尿路異常 (CAKUT) の一種で、2つある腎臓のうち一方が機能しなくなります。実際の生体内の組織に似せて3Dで細胞を培養するシステムをオルガノイドと呼び、「ミニ臓器」と言われることもあります。近年ではiPS細胞からオルガノイドを作製し、実際の臓器を模した研究の実施可能性が注目されています。しかしこれまでに、目的の尿管芽を安定して大量に作出する手法は確立されていません。

結果-iPS細胞を用いた”ミニ臓器”の作出

過去にCiRAでは、ヒトのiPS細胞およびES細胞から尿管芽へ分化させる方法を報告しています。今回はその手法を改良することで、繰り返し分枝構造を作る尿管芽オルガノイドの作出に成功しました。さらに、一度作出した尿管芽オルガノイドを1つ1つの細胞まで分解してから再度培養すると、ほぼすべての細胞からコロニーを形成するような先端部細胞に分化することが明らかになりました。このコロニーから尿管芽オルガノイドを作出できたため、1つの尿管芽オルガノイドから培養と分離を繰り返すことで大量の尿管芽オルガノイドの作出が可能になりました。これらの尿管芽オルガノイドを用いたMCDKの病態モデル再現にも成功し、疾患モデルとして尿管芽オルガノイドを活用できる可能性も示唆されました。この手法をさらに発展させることで、先天性腎疾患の病態理解や治療法開発にも繋がると期待されています。

出典元
京都大学 研究成果

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