間質性膀胱炎(ハンナ型)の発症とHLA遺伝子多型の関与を同定
東京大学は7月19日、間質性膀胱炎(ハンナ型)のゲノムワイド関連解析を行い、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)領域内に存在する、複数のヒト白血球抗原(HLA)遺伝子領域(HLA-DQB1、HLA-DPB1)の遺伝子多型が、間質性膀胱炎(ハンナ型)の発症に関与していることを同定したと発表しました。
間質性膀胱炎(ハンナ型)は、膀胱の粘膜に慢性炎症・びらんが生じ、強い膀胱・尿道痛と頻尿や尿意切迫といった排尿症状が現れる原因不明の難病です。膠原病などの自己免疫疾患を高確率で合併することがあるといわれていますが、その病態機序はほとんど解明されておらず、標準的な診断基準や根治治療も確立されていません。そのため、より正確な診断方法や有効な治療の開発は極めて重要な課題の1つでした。
今回、研究グループは、東京大学医学部附属病院に通院する144人の日本人の間質性膀胱炎(ハンナ型)の患者さんから得られたゲノムデータと、バイオバンク・ジャパンが保有する41,516人の対照群から得られたゲノムデータを用いて、ゲノムワイド関連解析を実施し、間質性膀胱炎(ハンナ型)の発症に関わる遺伝子多型(rs1794275)をMHC領域内に同定しました。
さらに、MHC遺伝子領域の詳細な疾患感受性遺伝子領域の解析(ファインマッピング)を実施し、同定されたrs1794275遺伝子多型と強い連鎖不平衡関係にある、HLA-DQB1遺伝子の71、74、75番目のアミノ酸配列と、HLA-DPB1遺伝子の178番目のアミノ酸配列の各々の変化が、間質性膀胱炎(ハンナ型)の発症に関わっていることを明らかにしました。
その後、研究グループは、別セットの26人の間質性膀胱炎(ハンナ型)の患者さんと1,026人の対照群のゲノムデータを新たに用いて、上述の結果が再現されることも確認しました。
また、以前より間質性膀胱炎(ハンナ型)の発症機序の1つとして、免疫の過剰反応が指摘されていましたが、HLA-DQB1 遺伝子の71、74、75 番目のアミノ酸配列の変化が免疫応答の異常につながっている可能性も示唆しました。
今回の研究は、間質性膀胱炎(ハンナ型)の発症に遺伝的要因が関わっていることを初めて明らかにしたものとなります。
東京大学はプレスリリースにて「間質性膀胱炎(ハンナ型)はその重篤性に加え、標準的な診断基準や根治治療法を欠き、患者さんのみならず医療従事者をも困窮させる非常に難しい疾患です。泌尿器科領域では唯一の指定難病となっており、その実態解明に向けて、厚生労働省間質性膀胱炎研究班を中心としたオールジャパン体制で研究が進められていますが、病態解明や治療法の開発につながるような、ブレイクスルーを得ることは容易ではありませんでした。本研究によって、間質性膀胱炎(ハンナ型)に関わる複数の HLA 遺伝子領域が明らかになったことにより、その病態の理解が大きく進むことが期待されます。また、将来的には、新規診断方法や疾患バイオマーカー、新規治療の開発につながることも期待されます」と述べています。
なお、同研究の成果は、科学誌のオンライン誌「Cell Reports Medicine」に、7月18日付で掲載されました。