若年性皮膚筋炎の臨床症状や病態に関与するタンパク質の特徴を解明
千葉大学は5月16日、若年性皮膚筋炎(Juvenile dermatomyositis: JDM)患者の血清の高深度プロテオーム解析を行い、臨床症状や病態に関与するタンパク質の特徴を明らかにしたと発表しました。
若年性皮膚筋炎(JDM)は小児の希少免疫疾患で、筋・皮膚病変や肺合併症など、多彩な症状が現れる自己免疫疾患です。日本国内では10万人あたり約1.7人が発症するといわれています。
日本人の若年性皮膚筋炎(JDM)の患者さんの約90%は筋炎特異的自己抗体のうち抗 MDA5抗体、抗NXP2抗体、抗TIF1-γ抗体のいずれかの抗体を持つとされていますが、これまで病態に関わる分子の詳細な分析についてはほとんど報告がありませんでした。
今回の研究は、治療介入前の若年性皮膚筋炎(JDM)の患者さん15名(抗MDA5抗体陽性5名、抗NXP2抗体陽性5名、抗TIF1-γ抗体陽性5名)と健常者5名を対象に行われた多施設共同研究です。計20名の血清より検出されたタンパク発現量の比較統計解析を行い、筋炎特異的自己抗体に特徴的に変化するタンパクグループの同定と病態に関わるパスウェイ解析を行いました。
本研究の結果、若年性皮膚筋炎(JDM)の血清には共通したタンパク質が多く含まれている一方で、各筋炎特異的自己抗体で個別に異なっているタンパクの種類や発現量がそれぞれの臨床的特徴を示すタンパクプロファイルを構成していることが明らかとなりました。特に抗MDA5抗体を持つ若年性皮膚筋炎(JDM)の患者さんの血中には、Ⅰ型インターフェロンや免疫プロテアソーム活性に関わるタンパク質が多く発現していることが分かりました。今回の研究結果により、今後の新たな治療法やバイオマーカーの開発に期待ができます。
千葉大学は今後の展望について「今回のような方法で発現タンパク質を詳細に解析し病態を理解していくことは、疾患の予後予測や治療戦略を立てる点で非常に重要です。MSAの病態に関連する重要な分子を同定することで、将来的に分子療法の適用や個別化医療の実現に近づく可能性があります。治療標的や新規バイオマーカーの検討を行うためには、更にサンプル数を増やした解析や、合併症などの異なる視点に注目した解析をすすめていく必要があります」と述べています。
なお、同研究の成果は、国際医学雑誌「Rheumatology」に、4月13日付で掲載されました。