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COVID-19感染に関連した小児突然死とLZTR1遺伝子変異を有するヌーナン症候群との関連が明らかに

東京医科歯科大学と広島大学は4月17日、分子剖検によりCOVID-19に関連した小児突然死の背景に、まれなLZTR1遺伝子変異を有するヌーナン症候群があることをつきとめたと発表しました。

この成果は、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科法医学分野の鵜沼香奈准教授、小児地域成育医療学講座の金兼弘和教授、人体病理学分野の山本浩平講師、広島大学大学院医系科学研究科小児科学の岡田賢教授らの研究グループと、昭和大学、東京大学、東京薬科大学、浜松医科大学、大阪母子医療センターとの共同研究によるもので、国際科学誌「Frontiers in Immunology」のオンライン版に4月18日付で掲載されています。

ヌーナン症候群は、Ras/MAPKシグナル伝達経路にかかわる遺伝子の先天的な変異により、低身長、思春期遅発、心奇形、特徴的な顔貌などを示す先天症候群です。発症頻度は、1000~2500名に1人程度とされていますが、多彩な臨床症状のため、診断されていない患者さんも多いと言われています。

最近、全エクソーム検査(WES)によりユビキチン修飾関連分子であるLZTR1変異がヌーナン症候群と関連することが判明しましたが、LZTR1遺伝子変異を有するヌーナン症候群患者さんは国内外で50例未満しか報告されていないため、遺伝子変異と臨床症状との関連などについては不明な点が多くあります。また、WESを剖検実務に導入している施設が皆無に等しいのが現状です。

SARS-CoV-2によるCOVID-19感染症は、2019年より世界に感染拡大し、多くの感染者が発生しました。これまで基礎疾患を指摘されていなかった未成年の感染者を解剖して調べてみたところ、まれな冠動脈起始異常、小児B前駆細胞性急性リンパ性白血病を呈していました。また、全エクソーム検査を実施したところ、ユビキチン修飾関連分子であるLZTR1変異が認められ、さらにヌーナン症候群の特徴的な外観が指摘されました。

今回の研究結果により、LZTR1遺伝子変異を伴うヌーナン症候群の患者さんと、COVID-19感染、まれな冠動脈の起始異常、白血病といった病態が複雑に絡み合っていることが明らかとなりました。

東京医科歯科大学の鵜沼香奈氏は研究の成果について「まだこの遺伝子変異を有するヌーナン症候群患者の報告数は少ないですが、今回の報告が本遺伝子変異を有するヌーナン症候群患者における病態との関連性を知る上で重要な手がかりとなることが期待されます」と述べるとともに「法医実務においてWESを導入している施設は皆無に等しいのが現状です。本件においても、多施設連携による分子剖検でヌーナン症候群を疑うことができなければ、全く別個の複数病変を有する患者さんの死亡で片づけられ、本研究成果が世界に発信されることはありませんでした。本報告が、分子剖検の重要性に光が当たるきっかけになればと願っております。さらに、WESによる精度の高い剖検診断の結果は、同じ病に苦しむ患者さんの突然死の予防や生前の正確な診断にも発展できる可能性が示唆されると考えています」と語っています。

出典
東京医科歯科大学 プレスリリース

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