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肺動脈性肺高血圧症の発症・重症化にRegnase-1が重要な役割

京都大学は8月31日、免疫細胞の活性化や炎症を抑えるブレーキとしての働きをもつRegnase-1(レグネース-1)が、国の指定難病である肺動脈性肺高血圧症(PAH)の発症・重症化において重要な役割を果たしていることを見出したと発表しました。この成果は、同大大学院医学研究科の夜久愛博士課程学生、竹内理教授、国立循環器病研究センター血管生理学部の中岡良和部長ら共同研究グループによるもので、国際学術誌「Circulation」オンライン版に8月22日付で掲載されました。

肺動脈性肺高血圧症は、心臓から肺へ血液を送る血管である肺動脈の血圧が高い状態が続く肺高血圧症の1つであり、進行性で予後不良の疾患です。現在、血管拡張薬の開発により、予後の改善が見られるも、未だ治療不応性・予後不良の症例が存在し、病態解明と新規治療法が求められています。

今回の研究では、肺高血圧症患者さんと健常者の血液細胞におけるRegase-1遺伝子発現量を比較し、炎症に関連する分子をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を分解することで炎症反応を抑えるRegnase-1タンパク質に着目。肺高血圧症患者さんの血液細胞におけるRegnase-1遺伝子の発現量を解析しました。

画像はリリースより

その結果、特に膠原病性PAHの病態に関与している可能性が示唆されました。また、Regnase-1欠損マウスを用いた実験を行ったところ、インターロイキン-6(IL-6)や血小板由来成長因子(PDGF)を阻害することでPAH病態の改善がみられたことから、肺胞マクロファージにおけるRegnase-1はIL-6、PDGFのmRNA分解を介してPAH病態を負に制御しているということが明らかになったとしています。

既存の血管拡張薬では、肺動脈構成細胞の異常な細胞増殖を制御できず、予後不良の症例が多数存在しているため、新しい治療薬の開発が望まれています。今後、Regnase-1の発現量や機能を薬剤的に制御する手法を開発するとともに、PAHの新規治療の開発に繋がる可能性が期待されます。

出典
京都大学 プレスリリース

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