日本初、神経線維腫症1型患者さんのための院内診療ネットワークを確立
名古屋大学は6月7日、同大医学部附属病院に神経線維腫症1型(NF1)患者さんを対象とした院内診療ネットワークを構築し、その進捗状況を報告しました。
この報告は、同院のリハビリテーション科の西田佳弘病院教授、整形外科の生田国大助教、同大大学院医学系研究科精神医学の尾崎紀夫教授ら研究グループによるもので、論文は国際科学誌「Scientific Reports」電子版に6月7日付けで掲載されました。
神経線維腫症1型(NF1)は多臓器の障害を引き起こす遺伝性疾患。診療を担当する医師は、この障害に最適なケアを提供するため、NF1患者さんの多様な臨床的な特徴を認識している必要があります。
米国では2007年、小児腫瘍財団によって神経線維腫症クリニックネットワークが設立され、神経線維腫症に対する診療レベルの標準化と向上を図られているそうです。しかし、日本国内には学際的な治療を行うNF1クリニックがなかったため、治療は一般的に1つの症状に対して1つの部門の専門家によって行われてきました。 そのため、NF1の他の症状に対する治療の遅れなどの問題がありました。
そこで名古屋大学医学部附属病院は専門家によるNF1院内診療ネットワークを構築し、日本で初めてこの病気に対する学際的なアプローチを開始。2014年1月から2020年12月までに 246人の患者さんがこの診療ネットワークを受診しました。その内訳は、男性107人(41%)、女性139人、平均年齢は26歳(3ヶ月から80歳)で、初診年齢が低いほど、受診患者数が多くなったそうです。
この診療ネットワークが始まってから受診患者数は徐々に増加。整形外科に関連する症候については、脊柱側弯症が60例(26%)、上腕・前腕・脛骨の骨異常が8例(3.5%)見られました。皮膚神経線維腫以外の神経線維腫は90例(39%)、悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)は17例(7.4%)に発症していました。
研究グループはプレスリリースにて、「学際的なNF1診療ネットワークシステムを日本で初めて立ち上げました。悪性腫瘍の発生率が高い遺伝性および全身性疾患であるNF1患者にとって、日本およびその他のアジア諸国でこのようなNF1診療クリニックの数が増えることは大きなメリットになると考えられます」と述べています。