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遺伝性希少疾患NGLY1欠損症に遺伝子治療の可能性、Ngly1-KOラットで確認

理化学研究所は6月15日、Ngly1遺伝子を欠損させたNgly1-KOラットの脳室内にヒトのNGLY1遺伝子を導入することで、運動機能が劇的に改善することを明らかにしたと発表しました。

この研究成果は、同研究所開拓研究本部鈴木糖鎖代謝生化学研究室の藤縄玲子テクニカルスタッフ、鈴木匡主任研究員、武田薬品工業リサーチT-CiRAディスカバリーの朝比奈誠主任研究員ら共同研究チームによるもので、論文は科学雑誌「Molecular Brain」オンライン版に6月13日付で掲載されました。

NGLY1欠損症は、患者数が世界で100人に満たない遺伝性の希少疾患です。NGLY1欠損症では発育不全、四肢の筋力低下、不随意運動など全身に重篤な症状が現れます。その病態発現の詳細なメカニズムは解明されておらず、有効な治療法も見つかっていないそうです。

理化学研究所と武田薬品工業は、NGLY1欠損症の治療法の開発を目指し、2017年から共同研究「NGLY1 deficiency Project」を行っており、これまでに患者の症状と類似した表現型(症状)を示す動物モデル(Ngly1-KOラット)を開発していました。

今回、研究チームはNgly1-KOラットの脳室内にアデノ随伴ウイルスセロタイプ9(AAV9)を用いたヒトNGLY1遺伝子の導入を実施。その結果、単回の投与で、大脳、小脳、脊髄などの中枢神経系の器官でNGLY1遺伝子の発現が確認され、運動機能の劇的な改善が認められたそうです。

画像はリリースより

この結果は、Ngly1-KOラットの表現型が可逆的(治療により症状が回復する)であり、NGLY1欠損症の治療法の開発に有用なモデル動物であること、NGLY1欠損症で認められる運動機能失調の一部は中枢神経系の異常によるもので、脳を含めた中枢神経系が治療の有力な標的器官であり得ることを示しています。

研究チームはプレスリリースにて、「これまでに鈴木糖鎖代謝生化学研究室は、患者団体であるGrace Science FoundationとNgly1研究に関する情報を共有してきましたが注3)、本研究はGrace Science Foundationが主体となる遺伝子治療による臨床試験の推進に大いに貢献すると期待できます。今後もさらにGrace Science Foundationとの連携を深め、NGLY1欠損症の病態解明や治療法開発のための研究を加速していくことを目指しています」と述べています。

出典元
理化学研究所 プレスリリース

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