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原発性胆汁性胆管炎の発症に関連する遺伝子変異を新規に特定

京都大学をはじめとする研究グループは原発性胆汁性胆管炎(指定難病93)について遺伝子解析を行い、7か所の疾患に関わる候補の領域を同定したと発表しました。今回用いられた新規の手法は原発性胆汁性胆管炎以外の疾患にも広く応用可能と考えられており、他の難病の遺伝的要因の同定にも繋がると期待されています。

原発性胆汁性胆管炎(PBC)は胆管が破壊され胆汁の流れが悪くなる疾患で、全身にかゆみやむくみ、だるさなどの症状があらわれ徐々に肝硬変へと進行します。20歳以降、特に50代の女性に多く発症すると推定されています。近年、疾患の原因遺伝子の探索にゲノムワイド関連解析(GWAS)が用いられるようになってきました。特に2型糖尿病や高脂血症などの疾患においてはGWASから創薬に繋がる例が出てきており、GWASを活用した疾患感受性遺伝子の同定が盛んに試みられています。通常のGWASは一塩基多型(SNP)と疾患や形質との関連を調べる手法ですが、近年では多数の変異を広く対象としたポリジェニックモデルが注目されており、本研究グループはポリジェニックモデルを応用した領域内遺伝率推定(RHM)法を用いてPBCの解析を行いました。

日本人の一般集団のゲノム情報と日本のPBC患者の遺伝子情報を比較し、未観測領域の変異を推定しました。ここで特徴的な約100万か所以上のSNPに対しGWAS法とRHM法を用いて解析したところ、STAT4、ULK4、KCNH5の3領域に統計学的に有意な水準で疾患との相関が示されました。これらの3領域は日本人でこれまでに報告がなく、中でもULK4およびKCNH5は日本以外の地域でも報告のない新規の変異として同定されました。また、シミュレーション研究の結果よりRHM法はGWAS法よりも高い検出力を持つと考えられていますが農業分野での利用が中心でありヒトの疾患解析には用いられてきませんでした。本研究はRHM法をヒトの遺伝子解析に用い、疾患関連遺伝子を同定した世界初の報告です。

出典元
京都大学 研究成果

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