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げんぱつせいたんじゅうせいたんかんえん
原発性胆汁性胆管炎Primary biliary cholangitis

指定難病93

原発性胆汁性胆管炎
症候性原発性胆汁性胆管炎
症候性PBC
無症候性原発性胆汁性胆管炎
無症候性PBC
旧称:原発性胆汁肝硬変(PBC)

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自己免疫性肝炎と原発性胆汁性胆管炎に対する症例対照研究2021・01・09

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原発性胆汁性胆管炎合併骨粗鬆症に対するデノスマブ治療の有効性ならびに安全性の検討:ゾレドロン酸との無作為化比較試験(DELTA Study)2021・01・05

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原発性胆汁性肝硬変に対する肝移植後予後因子に関する多施設前向き研究2020・08・08

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肝疾患の病態に腸内細菌叢と胆汁酸組成が与える影響に関する研究2020・04・16

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胆汁うっ滞性肝疾患における外来性遺伝子の検出とその意義についての検討2020・03・10

クローリングニュース

病気・治療解説

概要

肝臓は「人体の工場」といわれるほどいろいろな働きをしていますが、その中の一つに「胆汁」という消化液をつくるという働きがあります。胆汁は肝臓の中の「肝細胞」という細胞によってつくられたあと、「胆管」とよばれる細い管を通って流れます。胆管は、はじめはとても細い、顕微鏡を使わないと見えないような管ですが、あたかも川の流れのように、細い管がいくつも集合してだんだんと大きくなり、一本にまとまり太い管となって肝臓から出て行きます。 原発性胆汁性肝硬変(げんぱつせいたんじゅうせいかんこうへん)という病気は、肝臓の中のとても細い胆管が壊れるという病気です。英語ではPrimary Biliary Cirrhosisといい、頭文字をとってPBC(ピー・ビー・シー)と呼ばれています。肝臓の中のとても細い胆管が壊れるため、胆汁の流れが通常よりも少し滞ってしまい、血液検査をするとアルカリフォスファターゼ(ALP)やガンマ・グルタミル・トランスペプチダーゼ(γGTP)などの酵素が通常よりもかなり高い数値になります。さらに、血液の中に抗ミトコンドリア抗体(AMA)という物質が検出されるのがPBCの特徴です。 PBCの病名には「肝硬変」という言葉が入っています。これは、PBCという病気が発見されたころは初期の段階での診断ができず、肝硬変の状態まで進行し、様々な症状が出始めて初めてPBCとの診断がついた時代の名残です。すなわち、以前はPBCと診断された患者さんのほとんどは肝硬変まで進行していた方だったのですが、現在はもっと手前、無症候性の段階で診断がつき、実際には肝硬変まで進展していない場合がほとんどです。つまり、「原発性胆汁性肝硬変」という病名は多くの患者さんの病状とはかけ離れていることになり、このため病名を変えるべきであるという議論がなされています。

罹患数

厚生労働省の研究班による大きな病院を対象とした全国調査によると、PBCと診断される患者さんは全国でおよそ50,000~60,000人と推定されますが、その数は年々増加しています。ただ、増加しているのは軽い患者さんで、重症の方が増えているわけではありません。PBCは、皮膚の強いかゆみ、黄疸、食道・胃静脈瘤、腹水、肝性脳症など何らかの症状がある場合は「症候性」PBC、特に症状がない場合は「無症候性」PBCに分類されます。増加しているのは症状がまったくない無症候性PBCの患者さんで、最近では新たに診断された患者さん全体の約7割を占めています。

疫学

中年以降の女性に多い病気です。男女比は約1:7で、20歳以降に発症し、50~60歳に最も多くみられます

原因

この病気の原因はまだわかっていませんが、胆管が壊れる原因として免疫反応の異常、すなわち、自己免疫反応が関与する「自己免疫疾患」であることが、国内外の研究で明らかになりつつあります。人間には免疫の働きがあり、外から入ってきた細菌などの病原体を自らにとっての「異物」として認識し、攻撃をしますが、もともと自らのからだに備わっている組織や細胞を「異物」として誤って攻撃してしまうことがあります。これが自己免疫反応といわれるもので、攻撃される組織・細胞の違いによってさまざまな自己免疫疾患が知られています。PBCの場合、自己免疫反応によって胆管が攻撃されると考えられています。

遺伝

PBCの患者さんの子供が同じPBCになることはほとんどありません。しかし、同一親族内(親子、姉妹等)ではPBCの患者さんの頻度が比較的高いことなどから、糖尿病や高血圧、がんがそうであるように、PBCの発症にはやはり遺伝の影響があると考えられます。

症状

現在PBCと診断される方の多くは血液検査のみで診断されています。この段階であれば肝臓の中の胆汁の流れは多少滞ってはいるもののまだまだ十分に保たれていますし、肝臓の働きも正常ですので、自覚症状はほとんどありません。 この段階でPBCと診断されず、治療が行われない場合、さらに進行していくことがあります。すなわち、肝臓の中の小さな胆管がさらに破壊され、胆汁の流れが一層悪くなります。すると、胆汁に含まれる成分が血液中に逆流するため全身の強いかゆみが起こったり、食道や胃の静脈が腫れる(食道・胃静脈瘤)という症状が起こります。強い疲れやすさやだるさを感じることもあります。肝臓の中では胆管だけではなく肝細胞も破壊され、徐々に肝硬変へと進行します。また、食物中のビタミンDを吸収するために必要な胆汁が流れにくくなるため、ビタミンDが吸収されにくくなり、特に閉経期の女性では骨粗鬆症が進行しやすくなります。また、やはり胆汁が流れにくくなる結果血中コレステロールが上昇し、目の周りに脂肪が沈着する眼瞼黄色種ができることもあります。 さらに肝臓の働きが低下すると、眼球や皮膚が黄色くなる黄疸の症状や、浮腫(むくみ)や腹水、意識障害(肝性脳症)を生じて肝不全となり、肝移植を行わない限り救命できない状態に陥ってしまうこともあります。一部の患者さんでは肝臓にがんができることもあります。
 一方、自己免疫反応を起こしやすい体質の方では胆管だけではなく他の組織・細胞も自己免疫反応によって攻撃されることがあるため、PBCには他の自己免疫疾患がしばしば合併することが知られています。日本ではPBCの約15%の方に涙や唾液が出にくくなり、口が渇き眼が乾燥するシェ-グレン症候群、約5%に関節リウマチ、慢性甲状腺炎が合併するとされており、これら合併した他の自己免疫疾患の症状が目立つ場合もあります。

治療法

PBCを完全に治す薬はまだできていません。治療法としては、胆汁の流れを良くして肝硬変への進行を抑えるというPBCそのものに対する治療と、PBCに伴って生じる症状や合併症に対しての治療に大別できます。 PBCそのものに対する治療としては、ウルソ(ウルソデオキシコ-ル酸)という薬に胆汁の流れを促進し病気の進行を抑える働きがあることが分かり、現在PBCに対して世界中で使われています。ウルソデオキシコ-ル酸は胆汁の成分である胆汁酸の一種です。漢方では”熊胆:くまのい”として古くから知られており、胆石症や慢性肝臓病の治療に使用されてきましたが、1980年代後半にPBCに有効であることがわかり、現在重症の黄疸の方を除いたほとんどの患者さんに使われています。まれに、副作用として胃痛や下痢などの消化器症状がみられますが、もともと人間の体内に存在する物質でもあり、安全な薬で、長期にわたって飲むことができます。
 ウルソデオキシコール酸だけで十分に肝機能障害が改善しない場合、わが国ではベザフィブラートという薬がしばしば使われます。ベザフィブラートはもともと高脂血症の治療に使われる薬ですが、PBCに対しても肝機能障害を改善し、長期間の服用により合併症の発生を抑える効果があることが分かってきました。しかし、現在の健康保険では、ベザフィブラートのPBCに対する使用は正式には認められていません。 PBCに伴って生じる症状や合併症に対しての治療としては、まず強いかゆみに対して抗ヒスタミン薬が使われます。最近はオピオイド受容体というかゆみを伝えるたんぱく質の働きを抑える新しい薬が開発され、期待を集めています。ビタミンDの吸収障害による骨粗鬆症に対しては、活性化ビタミンDの他、現在多くの薬が開発されています。また、PBCが進行して肝硬変に至った場合は、他の原因による肝硬変と同じ治療を行います。食道や胃に静脈瘤ができ、放置しておけば出血の危険性が高いと予測される場合は予防的に内視鏡を使った治療を行いますし、腹水がたまった場合には食事制限、利尿薬などを使用します。 しかし、これら様々な内科的治療を行ってもなおその効果がみられず、生命に危険が及ぶと判断される場合、肝移植治療を検討します。身内に肝臓を提供する方がいらっしゃる場合は生体部分肝移植が行われます。また、脳死肝移植を受けられる方も少しずつ多くなってきていますが、この場合脳死肝移植の登録のための準備が必要となります。いずれにしても肝移植治療にあたっては、主治医によく相談された上で専門の施設に紹介してもらうことをお勧めします

経過

ウルソデオキシコール酸やベザフィブラートが使用されるようになってから、PBCの経過は明らかに改善しました。ほとんど症状のない無症候性PBCの患者さんでは、これらの薬を飲み続けていただくことによって、病気のない方と同じく日常生活を送り天寿を全うすることができるようになっています。いったん黄疸が現れても、その進み方は緩やかで、高度の黄疸に至るまでかなり時間がかかります。

患者さんに知って欲しいこと

ほとんど症状がなく、血液検査だけに異常がみられるという無症候性PBCの方は、薬を飲み続けていただければ日常生活の中で特別の注意は必要ありません。安静にする必要はありませんし、お仕事も普通にしていただいて結構です。むしろ最近では、肥満に注意していただくため、食事のエネルギー制限や適度な運動が必要な方が増えています。ただ、薬の服用を止めてしまうと病気の進行が進む可能性がありますので、病院への定期的な通院と薬の服用は続けてください。 病気が進行して肝硬変の状態に至ってしまった場合には、食事や運動など日常生活の中でもう少しきめ細かい注意が必要になりますので、主治医の先生とよくご相談してください。

※難病情報センターhttp://www.nanbyou.or.jpより、許可をいただき掲載しております。