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脳の機能単位を構成する神経が正しく配置されるメカニズムを解明

金沢大学の研究グループはショウジョウバエを用いて、ダウン症の原因遺伝子であるDscam1が、脳の機能単位である「カラム構造」の形成に重要な役割を持つと明らかにしました。脳のカラム構造の形成メカニズムはショウジョウバエとヒトでも共通していると考えられており、あらゆる動物の脳形成の過程や神経疾患の発症メカニズム解明に繋がると期待されています。

背景-脳機能を構成するカラム構造の形成過程

我々ヒトをはじめ、多くの動物の脳は数多くの神経細胞が複雑なネットワークを形成して構成しています。これらの神経細胞や秩序だった規則に則り「カラム構造」を示します。カラム構造は脳の機能単位としても働き、脳機能が正常に働くためにも非常に重要です。しかしカラム構造の形成過程は複雑であり、詳細は明らかになっていません。哺乳類では1つのカラムが数万の神経細胞から構成される一方で、ショウジョウバエはヒトと同様にカラム構造を示しますが1つのカラム構造は数百の神経細胞から構成されます。研究グループはこの性質を利用し、ショウジョウバエの脳を用いてカラム構造の形成過程を調べました。

結果と展望- 細胞系譜依存的反発現象の発見

脳の形成過程では神経幹細胞から多数の神経細胞が作られます。そこで本研究グループは、1つの神経幹細胞から作られた神経細胞を特定できるよう可視化し、カラムとの位置関係を調べ「細胞系譜依存的反発」現象を発見しました。これは、同じ神経幹細胞から作られた神経細胞 (同系譜の細胞) 同士が反発し、異なるカラムを形成する現象です。次に研究グループは、この現象のためには、神経細胞一つ一つがどの神経幹細胞から作られたかが識別されていると考え、ヒトのダウン症原因遺伝子であるDscamとショウジョウバエにおける相同な遺伝子であるDscam1遺伝子に着目しました。Dscam1遺伝子は1つの遺伝子が約2万種類に分けられるため、多くの細胞を分類し識別している可能性があります。実験の結果、同じ種類のDscam1によって識別された細胞、すなわち同じ神経幹細胞から作られた細胞は反発し、異なるカラムに分配されることが示されました。さらに、Dscam1の機能が阻害されると、同じ神経幹細胞から作られた神経細胞が同じカラムに集まり、カラムの機能に異常が見られました。本研究結果はショウジョウバエのみならずヒトを含む多くの生物で共通している可能性があり、将来的にはヒトの神経疾患の発病機構の解明や治療法の開発にも繋がると期待されています。

出典元
金沢大学 研究トピック

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