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腸内細菌が中枢神経系の炎症に及ぼす影響を解明

理化学研究所をはじめとする共同研究グループは、 多発性硬化症 (MS 指定難病13) のような中枢神経系の自己免疫疾患について、腸内細菌が疾患の発症や進行を促進する仕組みを発見しました。この研究により、小腸細菌叢の制御がMSの発症および進行を緩和する可能性を示しており、新たな予防法や治療法の開発にもつながると期待されています。

背景‐多発性硬化症と腸内細菌の関連

神経細胞の軸索の周りは、神経の軸索周囲を覆うミエリン (髄鞘) と呼ばれる脂質の構造で包まれています。多発性硬化症 (Multiple sclerosis) は、ミエリンに反応する自分自身のT細胞によって攻撃されるために様々な神経障害が起こります。近年ではMS患者の腸内細菌叢の解析により、腸内細菌が中枢神経系の炎症に関与している可能性が示唆されていますが、その詳細な仕組みは解明されていません。無菌状態で飼育したマウスでは実験的自己免疫性脳脊髄炎 (EAE) の発症や進行が抑えられることからも、腸内細菌と中枢神経系の炎症に関連があると考えられていますが、どのような腸内細菌が、どのように中枢神経系の炎症に関連しているのかは明らかになっていません。

結果と展望‐中枢神経系の炎症症状を引き起こす細菌の同定

本研究ではまず、マウスに異なる4種の抗生剤 (アンピシリン、バンコマイシン、ネオマイシン、メトロニダゾール) を投与し、異なる腸内細菌叢を持つ個体を作成しました。これらのマウスに対し人工的にEAEを引き起こしたところ、アンピシリンを投与したマウスでは、EAEの症状である四肢の麻痺が抑制されました。さらに、アンピシリン投与マウスでのみ大きく減少していた菌が見つかり、OTU0002と名付けました。OTU0002はインターロイキン-23 (IL-23) などのサイトカインを誘導しEAEを悪化させる可能性が示されました。また、OTU0002と他の菌の相互作用を解析したところ、L. reuteriとOTU0002の2種の菌を無菌マウスに定着させた場合に相乗的にEAEの症状が悪化しました。本研究により、異なる2種の腸内細菌と中枢神経系炎症の関連性が示されました。これらの研究結果は、腸内細菌叢のコントロールにより、MSのような中枢神経系の炎症性疾患の新規治療に寄与する可能性が示唆しています。

出典元
理化学研究所 研究結果(プレスリリース)

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