神経変性疾患の病因となるRNAの分解メカニズム解明
大阪大学大学院医学系研究科の研究グループは、前頭側頭葉変性症(指定難病127)、筋萎縮性側索硬化症(指定難病2)などの神経変性疾患を引き起こす異常RNAを分解するメカニズムを解明したと発表しました。
DNAは4種類の塩基が連なって構成されています。DNA上の塩基配列はRNAに写し取られ、その後タンパク質を産生するもとになります。ある遺伝子の塩基配列のうち、同じ配列が繰り返している領域をリピート配列と呼びますが、リピート配列が異常に伸びてしまったRNAは凝集体を形成し、毒性を持つ凝集体となります。過去の研究より、C9orf72という遺伝子から作られる異常伸長リピートRNAは、前頭側頭葉変性症 (FTLD) および筋委縮性側索硬化症 (ALS) を引き起こすことが知られていますが、こうした異常伸長リピートRNAがどのように細胞内で分解されるかは明らかになっていませんでした。
研究グループは疾患のモデル細胞を用いて、C9orf72遺伝子由来の異常伸長リピートRNAはRNAエクソソームにより分解されることを発見しました。エクソソームは細胞外小胞の一種として知られ、内部にはRNAやタンパク質などが含まれています。細胞内外の物質運搬に関与していると考えられています。異常伸長リピートRNAから産生されるジペプチド・リピート・タンパク質 (DPR) は FTLDやALSの病態に強く関連していることが知られています。さらに、DPRが異常伸長リピートRNAの分解を阻害するために、異常伸長リピートRNAが細胞内に蓄積されることも明らかになりました。今後、他の異常伸長リピートRNA分解メカニズムの解明にも繋がると期待されます。