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筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の治療薬候補を開発

名古屋大学をはじめとする研究グループは、エブセレンを基に筋萎縮性側索硬化症 (ALS 指定難病2)の治療薬となり得る候補化合物の開発に成功しました。本研究はALSの原因と考えられる異常なSOD1タンパク質に対し、細胞保護効果の高い化合物の開発に成功したものです。今後はモデル動物などを用いて有効性と安全性の確認が進められます。

背景-家族性ALS患者に多く見られるSOD1タンパク質の異常

筋萎縮性側索硬化症(ALS) は、進行性で致死的な難病(指定難病2)です。脳から発せられた、筋肉を動かす指令を筋肉に届けるための神経が障害されることが明らかになっています。徐々に運動神経が変性または消失し四肢や顔、呼吸器をはじめとする全身の筋力が低下し筋萎縮が進みます。国内には約10,000人程度の患者がいると推定されています。発症後数年以内に人工呼吸器の装着が必要となるため、治療法の開発が待たれます。ALSのうち約10%程度は遺伝性のALSであると知られており、そのなかでもSOD1遺伝子の異常が高頻度で見られます。過去に化合物エブセレンが、異常なSOD1タンパク質に結合し毒性を抑えることが報告されています。そこで本研究グループはエブセレンを基に、より治療効果の高い化合物の探索を目指しました。

結果と展望-より効果および安全性の高い化合物の探索

本研究に参加したイギリスのチームは、エブセレンと異常化SOD1の結合に関わらない部位について、様々に改変した複数の化合物を作製しました。改変したエブセレンと異常化SOD1の結合を解析した結果、エブセレンよりも効果の優れた化合物を複数見つけました。こうして得られた複数の化合物に対し、名古屋大学の研究チームは培養した神経細胞を用いて、神経保護効果を確認しました。その結果、エブセレンが神経を保護する濃度よりもはるかに低い濃度で強力な神経保護作用を持つ化合物を明らかにし、この化合物はエブセレンよりも細胞毒性が低く安全であることを確認しました。本研究により開発されたエブセレン改変化合物は、今後ALS疾患モデルマウスなどを用いて安全性や疾患の病態改善効果などが調べられます。

出典元
名古屋大学 研究成果情報

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