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網膜色素変性症に対するiPS細胞による治療法の開発・商業化に関するライセンスをブルーロック社に供与

富士フイルム株式会社の米国子会社である、FUJIFILM Cellular Dynamics社(以下FCDI)とOpsis Therapeutics社(以下オプシス社)は1月24日、バイエル AGの子会社であるBlueRock Therapeutics LP社(以下ブルーロック社)に、iPS細胞を用いた、網膜色素変性症や加齢黄斑変性症などの網膜疾患治療法の開発・商業化に関するライセンスを供与することに合意したと発表しました。

網膜色素変性症は、眼の中で光を感じる網膜に異常をきたす遺伝性の進行性疾患です。徐々に進行し、重症の場合は、40歳代までに光を失うことがあります。

永続的な視覚障害や失明の多くは、網膜の視細胞が加齢や損傷または遺伝性疾患によって変性・喪失されることで起こります。視細胞には、錐体細胞と呼ばれる中心部の高視力と色覚を担う細胞と、桿体細胞がと呼ばれる低照度での視力と周辺視力を担う細胞がありますが、それらの細胞は体内で再生できないため、移植することが治療法の一つとして考えられています。

今回のライセンス供与は、2021年にFCDI・オプシス社・ブルーロック社で行った、iPS細胞を用いた眼疾患治療法の研究開発における戦略的提携にて取り決めたオプション権をブルーロック社が行使したことに基づくものです。

2021年に、FCDI・オプシス社・ブルーロック社の3社は、iPS細胞を用いた眼疾患治療法の研究開発における戦略的提携に合意し、FCDIとオプシス社は、両社が有する、加齢黄斑変性症と網膜色素変性症を対象とした3つの網膜疾患治療プログラムの独占ライセンスをブルーロック社が取得できるオプション権を同社に付与しています。

今回は、その3つのプログラムの中から、網膜色素変性症を対象とする、iPS細胞由来の視細胞を用いた網膜疾患治療プログラム(開発コード:OpCT-001)のオプション権をブルーロック社が行使しました。

OpCT-001は、他家iPS細胞由来の視細胞を移植し、錐体と桿体に分化させることで網膜の回復を促すことを目的とした網膜疾患治療プログラムです。

FCDIの社長・CEO長谷川知行氏は「次世代のiPS細胞由来の治療法開発に向けて、FUJIFILM Cellular Dynamicsとオプシス社は、ブルーロック社と密接に協力してきました。このライセンス供与により、OpCT-001を臨床ステージに移行させ、視細胞変性疾患の治療の実現に向けた次のステップに進めることを嬉しく思います。私たちは、ブルーロック社との効果的なパートナーシップを継続し、iPS細胞技術の可能性を最大限に生かすことで、眼疾患を対象としたベスト・イン・クラスの細胞治療法の創出を目指します」と述べています。

また、ブルーロック社の社長・CEO Seth Ettenberg氏は「iPS細胞由来の治療法の開発はエキサイティングな最先端科学であり、視覚障害や失明を抱える患者さまの視力を回復する可能性を秘めています。今回の合意はFCDIとオプシス社との提携における重要な一歩であり、私たちは、2024年中に予定しているOpCT-001の米国IND申請(臨床試験実施申請)を経て、視細胞変性疾患治療の実現に向けてさらに前進できることを非常に嬉しく思います」と述べています。

出典
富士フイルム株式会社 プレスリリース

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