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日本血栓止血学会による市民向け動画配信開始

日本血栓止血学会は、毎年行われる市民公開講座の代わりに市民向け動画を公開したことを発表しました。今年は新型コロナウイルス感染症流行の影響を受け、市民公開講座の開催が中止されました。代わりに啓発動画を作成し、公開に至ったとのことです。

①血栓症ってどんな病気?体の中でなぜ血が固まるの?
(浜松医大医生理学 浦野哲盟)

血液は出血時など必要な時にかたまり(血栓)を形成し、不要になると血栓は溶けるような仕組みがあります。血栓が大きすぎると血管が詰まってしまい、血液の流れが滞ってしまいます。これを血栓症と呼びます。血液が血管内で固まってしまう原因は、血管、血液、血流の3つが考えられます。継続して運動習慣を作ることで体重が減少し、高脂血症が改善されると血栓が詰まるのを抑える効果が期待されます。

②深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症について (星ヶ丘医療センター血管外科 保田知生)

深部静脈血栓症は手足の静脈血管内にできた血のかたまりのことをいいます。肺血栓塞栓症は、手足(特に足)の血管でできた血栓が流れていき肺の動脈に詰まる疾患です。深部静脈血栓症と肺塞栓症は一連の経過から起こることから、これらを併せて静脈血栓塞栓症と呼びます。早期の診断と治療がその後の生死を分けることがわかっています。

③がんと血栓症 (関西労災病院外科 畑 泰司)

がん患者はそうでない患者に比べ静脈血栓塞栓症になるリスクが4~7倍高いと言われています。日本人を対象とした研究より、静脈血栓塞栓症に影響を与える要因の27.0%ががんであることがわかりました。がんが体内で増殖する際に起こる直接的な作用と、がんの治療に伴う二次的な作用が主な原因と考えられています。がんの種類によっても静脈血栓塞栓症のなりやすさが異なっており、すい臓がん患者でそのリスクが最も高いとされています。


④新型コロナウィルス感染と血栓症(金沢大学病態検査学 森下英理子)

新型コロナウイルス感染症の流行は現在も続いており、まだまだ油断できません。65歳以上の高齢者、慢性的な呼吸器疾患や中等度以上の気管支ぜんそくの患者、重度の肥満の方や糖尿病患者などは、新型コロナウイルスに感染しやすいと報告されています。感染者数は20歳代から50歳代まで幅広いですが、60歳代以上では重症者数および致死率が非常に高くなります。これまでに、血栓の指標であるD-ダイマーの値が高い方は感染後の予後が悪いことがわかっています。海外の研究から、血栓症予防治療薬を投与していたにもかかわらず約1/3の重症感染者で血栓症を発症することが明らかになりました。新型コロナウイルスに感染することで、サイトカインが増加するため血液凝固因子が増加したり、ウイルス自体が血管を傷つけるため血管内皮障害が起こると考えられています。

出典元
日本血栓止血学会

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