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とくはつせいけっせんしょう
特発性血栓症idiopathic thrombosis

指定難病327

他に、特発性血栓症(遺伝性血栓性素因によるものに限る。)もあります。

特発性血栓症
遺伝性血栓性素因

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病気・治療解説

概要

私たちの体の中を流れている血液には、出血を止めるために血液を凝固する働き(血液凝固因子)と血液凝固が過剰にならないようにする働き(血液凝固制御因子)が備わっています。「特発性 血栓症 (遺伝性血栓性素因によるものに限る。)」とは、血液凝固制御因子であるプロテインC、プロテインSやアンチトロンビンが生まれつき欠乏することにより、血栓ができやすい体質になり、若年性(40歳以下)に 重篤 な血栓症を発症する症候群です。新生児から乳幼児では脳出血・ 梗塞 、脳静脈洞血栓症などの重篤な頭蓋内病変がしばしば先行し、さらには電撃性紫斑病や硝子体出血などを引き起こします。小児期から成人期にかけては、再発性の静脈血栓 塞栓症 (深部静脈血栓症や肺塞栓症など)を発症し、とりわけ急性肺塞栓症は生命に関わります。さらには若年性脳梗塞などの動脈血栓症、あるいは習慣流産との関連も示唆されています。深部静脈血栓症により慢性的な静脈弁不全が生じると、下肢静脈瘤や静脈うっ滞性下腿潰瘍(慢性静脈不全症)を発症することがあります。

罹患数

厚生労働省研究班や学会の全国調査から、患者数は全国で2,000人程度、1年間に新たに発症する患者数は新生児・乳児期では100人未満、成人期では約500人と推定されています。

疫学

新生児から乳幼児期に起こる重篤な症状は、感染症を契機に発症することがあります。小児期から若年成人期にかけては、感染症、脱水、外傷、手術侵襲、長時間にわたる不動や身体抑制、妊娠・出産、経口避妊薬などの女性ホルモン剤服用などを契機に発症することがあります。

原因

プロテインC、プロテインSやアンチトロンビンの遺伝子に異常があることにより、これらの血液凝固制御因子が生まれつき欠乏することが原因と考えられています。しかしながら、同じように血液凝固制御因子が欠乏しても、症状の程度には個人差があり、新生児・乳幼児期と思春期・成人期では症状が異なるなど、その発症メカニズムは十分にあきらかにされているとは言えません。

遺伝

常染色体優性の遺伝形式で遺伝します。私たちの遺伝子は、父親由来と母親由来の2つが一組となってできていますが、この両方の遺伝子に異常がある場合を「ホモ接合体ないし複合ヘテロ接合体」、いずれか一方にのみ異常がある場合を「ヘテロ接合体」といいます。患者さんが「ホモ接合体ないし複合ヘテロ接合体」の場合、お子さんはすべて「ヘテロ接合体」となり血液凝固制御因子が生まれつき欠乏します。一方、患者さんが「ヘテロ接合体」の場合、お子さんは1/2の確率で「ヘテロ接合体」となり、患者さんと同程度に血液凝固制御因子が欠乏します。しかしながら、実際に症状が起こるかについては、遺伝子異常を含めたさまざまな要因が関連しますので。遺伝子に異常を持つことで実際に発症する可能性(浸透率)は判明していません。

症状

プロテインC遺伝子異常のホモ接合体ないし複合ヘテロ接合体でプロテインCが著しく欠乏している場合、新生児から乳幼児期に脳出血・梗塞、脳静脈洞血栓症、電撃性紫斑病、硝子体出血などの重篤な症状を起こすことが多いようです。脳出血・梗塞、脳静脈洞血栓症では、頭痛、嘔吐、発熱、痙攣や四肢の麻痺、意識障害などが見られます。電撃性紫斑病は、急激に手足や臀部、腹部の皮膚の出血性 壊死 が進行し死に至る重篤な病気で、活性化プロテインC製剤による治療が必要です。硝子体出血は眼球内の硝子体に血液がたまった状態で、視力低下を引き起こしますが失明する恐れもあります。
小児期から成人期にかけて、プロテインC、プロテインSやアンチトロンビンの欠乏にともない、再発性の静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症や肺塞栓症など)を発症します。長時間足を動かさずに同じ姿勢でいると、足の深部にある静脈に血栓ができて、大腿から下腿に発赤、むくみ、腫れ、痛みなどが出現します(深部静脈血栓症)。肺塞栓症は、足にできた血栓の一部が血流にのって肺に流れて肺の血管を閉塞してしまう状態で、胸痛、呼吸困難、失神などが出現し、大変危険な状態になります。車中や飛行機旅行中に起こった場合にエコノミークラス症候群と呼ばれていますが、予防のために歩行や足首の運動、脱水を避けるのが有効です。深部静脈血栓症が慢性化して静脈弁の働きがそこなわれると静脈の還流が悪くなり、下肢静脈瘤や静脈うっ滞性下腿潰瘍を発症することがあります(慢性静脈不全症)。下肢のむくみ、腫れ、痛み、しこり、湿疹、色素沈着や潰瘍など、症状はさまざまです。特発性血栓症では、脳静脈洞血栓症や上腸間膜静脈血栓症などの稀な血栓症を起こすことがあります。脳静脈洞血栓症の症状は前述の通りですが、上腸間膜静脈血栓症では、腹痛、むかつき、嘔吐、排便回数増加、血便などが見られます。

治療法

一般的な治療法として、ワルファリン、ヘパリンなどによる 抗凝固療法 があり、また最近では出血性副作用の少ない新しい抗凝固薬が盛んに開発され、使用されてきています。アンチトロンビン欠乏症、プロテインC欠乏症での血栓症発症時には、それぞれアンチトロンビン製剤や活性化プロテインC濃縮製剤による補充療法が行われることがあります。肺血栓塞栓症では、血栓を取り除くために、ウロキナーゼ、遺伝子組換え組織プラスミノゲンアクチベーターなどで血栓を薬で溶かす治療、外科的な血栓除去術などが行われ、予防に下大静脈フィルター留置術が行われることがあります。

経過

通常、重篤な血栓症を発症しない限り、 予後 は良好です。しかし、肺血栓塞栓症を併発すると症状が重篤で死に至ることもあります。
下肢深部静脈血栓症では、下肢の疼痛、熱感、著明なむくみ(浮腫)などが出現します。肺血栓塞栓症では、胸痛、呼吸困難、ショックを起こし突然死することもあり、長距離飛行機旅行時に発症するロングフライト症候群(別名:エコノミークラス症候群)もその一つです。まれな部位での静脈血栓症の発症、例えば腸間膜静脈血栓症では腹痛、上矢状静脈洞血栓症などでは頭痛、吐気などの症状を示すこともあります。
主に深部静脈血栓症として発症し、そのうち遺伝性血栓性素因によるものは、再発しやすいこと、ときに腸間膜静脈や上矢状脳静脈洞などまれな部位での発症、40歳以下の比較的若年者での発症、しばしは家族内発症を認めることなどの特徴があります。
静脈血栓症後症候群として、下肢の浮腫、倦怠感、表在性静脈瘤や皮膚難治性潰瘍などの合併症があります(慢性静脈不全症)。また、肺血栓塞栓症の合併症として進行性の息切れ症状を呈する慢性血栓塞栓性 肺高血圧 症があります。さらに、妊娠自体が後天的な血栓性リスクの一つでもありますが、合併症として胎盤に血栓が多発することによる不育症や習慣流産を起こすこともあります。

患者さんに知って欲しいこと

静脈血栓症は複数の血栓性リスクが重なり発症する疾患で、遺伝性血栓性素因もそのリスクの一つですが、単独では通常発症せず、他の血栓性リスク(長期臥床、手術、妊娠、感染症、避妊薬内服、加齢、肥満、脱水など)が重なると発症する危険性が高まります。したがって、これらの後天的な血栓性リスクを避ける注意が必要です。例えば、飛行機に限らず、列車や自動車での長距旅行移動時には、こまめな水分補給とトイレ時歩行などによる下腿の運動をお勧めします。また、震災時の車中泊にてトイレ回数を減らすため、あるいは長時間の野外コンサートなどで仮設トイレに並ぶことを避けるために水分補給を控えたことによる脱水も、静脈血栓塞栓症発症の要因になります。こまめな水分補給とトイレ時歩行は頻回に行うことをお勧めします。
生まれつき血栓症を起こしやすい遺伝性血栓性素因をもつ人は、血栓症を起こすきっかけとなる血栓性リスク(長期臥床、手術、妊娠、感染症、避妊薬内服、加齢、肥満、脱水など)を避けた日常生活を送るよう注意が必要で、特に血栓症の既往がある場合には、医師の管理を受けることが強く勧められます。

※ 難病情報センター(http://www.nanbyou.or.jp/)より、許可をいただき掲載しております。