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パーキンソン病の発症とライソゾーム病の遺伝的関連を発見

順天堂大学大学院と川崎医科大学、長庚大学(台湾)らによる研究グループは、ライソゾーム病の原因と考えられているプロサポシンというタンパク質を作る遺伝子が、パーキンソン病の発症にも関わっていることを発見したと発表しました。今回の研究の成果は、パーキンソン病のさらなる病態の解明や、新たな治療法の開発に繋がることが期待されます。

パーキンソン病は、中脳と呼ばれる部分のドーパミン神経が不足することにより発症します。ドーパミン神経が減少することによって体を自由に動かすのが難しくなり、手足がふるえたり、筋肉がこわばったりといった症状がみられます。ドーパミン神経が減少する原因の詳細はまだ明らかになっていませんが、α-シヌクレインが神経細胞内に凝集し溜まっていくことで発症すると考えられています。

研究の背景

ライソゾームと呼ばれる器官は、細胞内で働くことから細胞内小器官と呼ばれており、細胞の中の古くなった脂質などを分解しています。プロサポシン遺伝子から作られるサポシンと呼ばれるタンパク質は、ライソゾームの働きを活性化する役割を持っています。サポシンは大きくA~Dの4つの領域に分けられ、A、B、Cの領域に変異が起こるとライソゾーム病という疾患が発症することは知られていました。一方で、Dの領域に変異が起こった場合にどのような疾患を引き起こすかは知られていませんでした。

研究の内容

今回の研究では家族性のパーキンソン病患者290人を対象に研究が行われ、その結果、3家族からサポシンDの遺伝子に変異が見つかりました。こうした患者から作られたiPS細胞より、中脳にあるドーパミン神経を作成したところ、ライソゾームの機能に異常が起こることが明らかになりました。さらに、パーキンソン病の特徴でもある、α-シヌクレインの凝集がみられました。
さらに、サポシンD遺伝子に変異のあるマウスを人為的に作成したところ、パーキンソン病によく似た運動障害がみられ、脳の神経細胞が減少していました。

今後の展望

現在までにパーキンソン病は詳細なメカニズムが明らかになっておらず、根本的な治療法も開発されていません。今回の研究により、これまで明らかになっていなかったサポシンDとライソゾーム病との関連が明らかになりました。また、人為的に作成したサポシンDに変異のあるマウスがパーキンソン病の症状を示していることから、このマウスを用いて新たな治療薬の開発が進むことが期待されています。

出典元
日本医療研究開発機構 プレスリリース

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