I型脊髄性筋萎縮症患者が対象のリスジプラムの臨床試験、パート2部分でポジティブな成績
中外製薬株式会社は1月23日、I型脊髄性筋萎縮症(SMA)患者を対象にリスジプラム(一般名)を評価したピボタル試験「FIREFISH試験」のパート2部分において、ポジティブな成績が得られたと発表しました。
FIREFISH試験の主要評価項目は、BSID-III(Bayley Scales of Infant and Toddler Development – Third Edition)の粗大運動スケールで評価した、投与開始12ケ月時点における、最低5秒間、支えなしで座位が保持可能な乳児の割合で、これを達成したといいます。
なお、リスジプラムに関する実施中のいずれの臨床試験においても、試験からの脱落につながる薬剤関連の安全性の所見は現時点で確認されていないそうです。また同剤の安全性はこれまでに認められている安全性プロファイルと同様で、新たな安全性上の所見は示されません。
FIREFISH試験とは
FIREFISH試験は、I型SMAの乳児(1~7ケ月)を対象とした、2パートからなる非盲検単群のピボタル試験です。パート1(21名)では、パート2における至適用量を検討。パート2(41名)では、BSID-IIIの粗大運動スケールで評価した、投与開始12ケ月時点における、最低5秒間、支えなしで座位が保持可能な乳児の割合を指標として、有効性の評価を実施しました。なお、ロシュ社は、SMA財団およびPTCセラピューティクスの協力のもと、同試験を行っています。
リスジプラムとは
リスジプラムは、中枢神経系および全身のSMNタンパクレベルを増加させるように創製された、経口投与が可能な臨床開発中の薬剤です。運動神経および筋肉機能をよりよくサポートするために、SMN2遺伝子から機能性のSMNタンパクの産生が増加するように設計されています。
2018年12月には欧州医薬品庁(EMA)からSMAの治療薬としてPRIME(PRIority MEdicines)指定を受けています。欧州、米国およびスイスではオーファンドラッグ指定を受け、また米国食品医薬品局(FDA)からファストトラック指定を受けています。日本では2019年3月に希少疾病用医薬品指定を受けています。
脊髄性筋萎縮症(SMA)とは
遺伝性の神経筋疾患であるSMAは、脊髄の運動神経細胞の変性によって筋萎縮や筋力低下を示します。乳幼児では最も頻度の高い致死的な遺伝性疾患で、乳児期から小児期に発症する患者数は10万人あたり1~2人です。SMAの原因遺伝子はSMN遺伝子で、SMN1遺伝子の機能不全に加え、SMN2遺伝子のみでは十分量の機能性のSMNタンパクが産生されないため発症する疾患です。