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【国立精神・神経医療研究センター】小児の難治性てんかんに対する脳梁離断術の効果の神経メカニズムを解明 ~灰白質ネットワークの改善を脳画像で証明~

国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 知的・発達障害研究部の上田理誉 流動研究員、稲垣真澄部長、およびNCNP脳病態統合イメージングセンター(IBIC)の松田博史 センター長、病院脳神経外科の岩崎真樹部長、放射線診療部の佐藤典子部長、小児神経科の佐々木征行部長らのNCNP内研究グループは、小児の難治性てんかんに対する脳梁離断術後の画像解析を行い、
①病的な脳ネットワーク経路が減少し正常な脳経路が回復していること
②脳梁の病的なてんかん伝播経路が切断されること
など術後の脳構造ネットワークについての新しい知見を明らかにしました。

小児の難治性てんかんは薬物療法でのコントロールが難しく、一部の患者さんに対しては、てんかん焦点を摘出するなどの脳外科治療が行われています。その中の一つ、脳梁離断術は焦点切除の対象にはならない難治性てんかんの患者さん、とくに小児に対して適応される術式です。脳梁は、左右の大脳半球を結ぶ神経線維の集合体です。脳梁がてんかん活動(放電)の広がりに深く関わっているため、その最も重要な経路を切断することが発作抑制につながるという仮説をもとに、脳梁離断がこれまでに実施されてきました。しかしながら、脳梁離断術のもたらすこのような変化がどのような中枢神経系メカニズムに支えられているかについては今まで詳しく知られていませんでした。

脳梁離断術を受けた手術時年齢平均8.6歳(3-17歳)の21名の難治性てんかんの患者さんを対象に行われた今回の研究の結果、脳梁離断術を行うとハブが正常な位置に出現し、大脳内側構造の連結性が低下すること、ネットワーク構造の安定性はむしろ低下することがわかりました。脳画像解析により脳梁離断術が灰白質ネットワークを改善することを確認したことで、外科治療がもたらす神経基盤の解明への前進に貢献したものと指摘できる上、術前における治療効果の予測に応用することが今後、期待されます。

※ハブ:脳内のネットワークのうち、特に重要性が高いと考えられる領域

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