IgG4関連疾患で起こる臓器障害のメカニズムを東京理科大学らが解明
東京理科大学は12月20日、肝臓、すい臓、腎臓などの臓器や、血管、涙腺、唾液腺など、全身のさまざまな組織に腫れや炎症を生じる原因不明の難病「IgG4関連疾患」で、臓器に強い炎症が生じるメカニズムを明らかにしたと発表しました。この研究は、同大生命医科学研究所分子病態学研究部門の久保允人教授らの研究グループによるもの。研究成果は、国際医学雑誌「International Immunology」に11月12日付でオンライン掲載されています。
IgG4関連疾患は、全身のさまざまな臓器に炎症による障害が起きる原因不明の難病です。同疾患は、日本国内に8,000~20,000人の患者さんがいると考えられていますが、その発症・増悪のメカニズムは未だ不明な点が多く、厚生労働省によって難病に指定されています。
今回の研究では、臓器の細胞に炎症を引き起こすのが病原体を攻撃して排除する免疫細胞の1つ「細胞傷害性T細胞」であることや、IgG4抗体が血液中に存在するときに細胞傷害性T細胞の働きが活性化され、炎症が増悪することが判明しました。これにより、IgG4関連疾患に対する新たな治療戦略を提示することができたとしています。
久保教授はプレスリリースにて、以下の通りコメントを寄せています。
IgG4関連疾患の標的治療として、IgG4抗体を減らすこと、細胞傷害性T細胞の機能を落とすことの2つの可能性が考えられるようになりました。今後はこれらの治療応用への可能性を探っていければと思います。
IgG4とは
IgG4は、免疫グロブリン(Ig)の1つ。細菌やウイルスなど病原体に対して、身体が抵抗するためのシステム「免疫」に関わるタンパク質です。身体に侵入した病原体や病原体に既に侵された細胞などと結合し、病原体を無力化したり、白血球など免疫細胞が病原体を攻撃する際の目印として働いたりします。
IgG4関連疾患とは
IgG4関連疾患は、膵臓、唾液腺、涙腺、腎臓など全身の臓器が腫れたり、硬くなったりする原因不明の病気です。上記のIgG4が血液中で高いことや、臓器でIgG4分泌細胞の著しい浸潤や強い線維化が認められます。高齢の男性に比較的多く認められる病気ですが、唾液腺や涙腺がおかされる患者さんには男女差はありません。
その症状は、発症した臓器により異なり、肺では喘息症状、涙腺・唾液腺では眼瞼(がんけん)や下顎部・耳下部の腫れ、胆管や膵臓では黄疸や糖尿病、腎臓・後腹膜では腎機能障害、尿管狭窄(水腎症)などが引き起こされます。治療法は、ステロイド投与が第一選択薬で、比較的高容量で導入し、その後維持療法を行います。維持療法は1~3年とされ、寛解が維持されている場合は投薬を中止することもあります。一方、しばしば再発が認められますが、その際の治療法はまだ確立されていません。
出典元
東京理科大学 プレスリリース