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気管支喘息患者は新型コロナウイルス感染症にかかりにくい可能性を示唆

国立成育医療研究センターは2020年6月2日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者では持病として気管支喘息を患っている者の割合が低いことを発表しました。これまでに中国、アメリカ、メキシコで得られた感染者のデータを解析したところ、3国での喘息有病率と比較してCOVID-19患者の気管支喘息の基礎疾患保有率が低いことが明らかになりました。こうした結果から、気管支喘息の患者が新型コロナウイルスに感染しにくい可能性が考えられるとのことです。

世界的な影響を与えた新型コロナウイルス感染症の流行

COVID-19の流行により世界的に見ると37万人以上の死者を出し、613万人以上の発症が確認されました。流行の影響によって複数の都市でロックダウンや規制が発表され、今もなお医療の現場に大きな打撃を与えています。コロナウイルス自体は一般的な風邪症状を引き起こすウイルスとしても知られますが、新型コロナウイルスは通常のコロナウイルスとは異なり新型コロナウイルスは軽症から重症になる人など様々な症状がみられます。新型コロナウイルスは感染先の上皮細胞に侵入する際に結合する分子としてアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を用いる点が、他のコロナウイルスと異なる点であると明らかになっています。一方で、一般的な鼻かぜの原因として知られるライノウイルスは気管支喘息の発作を引き起こすことも知られてきました。気管支喘息の患者は、ウイルスを攻撃し増殖を抑制するインターフェロンというタンパク質を分泌する力が弱いため、新型コロナウイルス感染症にかかりやすい、または重症化しやすいのではないかと予想されていました。

新型コロナウイルス感染症患者に気管支喘息患者が少ないことが明らかに

中国、アメリカ、メキシコの8都市から得られた1万7000人以上の新型コロナウイルス感染症患者を調べたところ、気管支喘息の合併率は5.72%であり、それら3国の気管支喘息有病率である7.95%を下回りました。また、中国およびアメリカの新型コロナウイルス感染症患者を調べると、慢性閉塞性肺疾患や糖尿病を患っている患者は重症例に多いのに対し、気管支喘息を患っている患者は軽症例と重症例でほぼ差がありませんでした。また、過去には、新型コロナウイルスと同様にACE2に結合するSARSウイルス(SARS-CoV)の感染も気管支喘息患者では少なかったことが報告されています。

気管支喘息とは

気管支喘息とは、気道が狭くなって呼吸が苦しくなることを繰り返す疾患です。主な症状として、ゼーゼーという息や咳がみられます。原因として遺伝的要因と環境的要因がどちらも関係し合っているとされています。小児の喘息では、学年が大きくなるにつれて症状が安定してくると言われていますが、様々な要因により発症する疾患なので患者さん自身の病気への理解が大切です。

※気管支喘息患者でも、新型コロナウイルス感染症を過小評価してはいけません。また、この発表は、患者さんの現治療ステップを下げることを支持または推奨するものではありません。

出典元
国立成育医療センタープレスリリース

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