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突然発症した全身性強皮症、SNSのつながりを励みに

全身性強皮症患者の中湊あやさんは、疾患と闘いながらSNSで同じ病気の患者さんに向けて情報を発信されています。今回、中湊さんに全身性強皮症と診断されたときのお気持ちや同じ疾患を持っている方へのメッセージなど、お話を伺いました。

これまでの経緯

  • 2019年8月 吐血で入院し逆流性食道炎と診断を受ける
  • 2020年2月 発熱が続くが新型コロナウイルス感染症の流行と重なりなかなか検査が受けられなかった
  • 2020年3月 両腕が赤く腫れあがる
  • 2020年4月 指や肘が伸ばせなくなり、腕も上に上がりにくくなる
  • 2020年5月 近医にて膠原病の可能性を指摘され総合病院へ紹介、検査を行い全身性強皮症と診断。治療のため全身性強皮症の研究も行っている大学病院に入院
  • 2020年6月 退院
  • 現在 2~3週間毎に通院治療を行いながら、SNSで病気のことや日常生活のことを同じ疾患を抱える方に向けて発信している

一生付き合っていかなければいけない…受け止めきれない気持ち

レアズ編集部:まず、診断されたときのお気持ちを聞かせてください。

中湊:新型コロナウイルス感染症が流行した時期と重なり、なかなか病院にかかることができず、5月に近所の内科にかかったところ、すぐに大きな病院にかかったほうが良いと言われまして、総合病院にかかりました。その総合病院では、専門家がいる大学病院を紹介されそちらにかかることになりました。

総合病院で「確実に全身性強皮症で今、急性期ですね」と病名を告げられたときは、びっくりして「この病気は治りますか?」と聞きました。「この病気は完治するものではないので、一生付き合っていかなければならない」と言われたときはショックすぎて、先のことが考えられなかったです。大学病院に紹介され、担当の先生から「曲がり切った腕や指、皮膚が固くなった腕やお腹が100%治りますとは言えないですが、進行を食い止めるように頑張りましょう」と言われると同時に、治療のお金の負担を軽減するため、指定難病の手続きをしてくださいと言われました。

翌日、指定難病受給者証の申請のため役所に行き、障害者支援のパンフレットを渡され、説明を受けたときは、つい数か月前まで普通に生活をしていたのに、腕が曲がらなくなっている状況を受け入れられず、パニックみたいになりました。その日から入院するまでの1週間は精神的にとてもキツかったです。

レアズ編集部:その1週間はどう過ごされたのですか?家族や友人に相談されましたか?

中湊:その当時は会社の近くで1人暮らしをしていました。また、自分でも受け入れられなかったので、家族や友達にも話せる状態ではなく、その1週間は思い詰めていました。3月から症状が現れ、入院当時は生きているのが辛いと思うほどの痛みで、寝ることもままならず落ち込んでいました。

不安で泣いていた入院生活

レアズ編集部:そんな辛い1週間を過ごし、実際に病気について知識を深めたのは入院後でしたか?

中湊:そうですね。入院中に先生が丁寧に説明をしてくださったので、その後スマホで調べて、自分でメモ書きをしながら知識を深めていきました。

レアズ編集部:全身性強皮症という病名は診断されたときに初めて聞きましたか?

中湊:そうです。強皮症という言葉は診断を受けたときに初めて知りました。

私は5年前に右甲状腺を摘出してからは大病もなく過ごしていましたし、親族にも膠原病の既往がある人はいなかったので、思ってもみませんでした。時期的にも新型コロナウイルスにかかったのではないかと思い、新型コロナウイルスのことばかり調べていました。全身性強皮症はマイナーですが、膠原病はよく聞く言葉なのに、それについては全く調べていませんでしたし、自分は違うだろうと思っていたことを後から後悔しました。

レアズ編集部:膠原病についてはご存知だったんですね。

中湊:母の友達でリウマチの方がいて、指が曲がって思うように動かないと聞いたことがあったので、ただ、その知識だけで他には知らなかったです。

レアズ編集部:情報収集で苦労した点はどんなことですか?

中湊:入院当初はGoogleで「全身性強皮症 薬」と検索して調べていました。でも、出てくる日本語の説明はほぼ一緒。内容もざっくりしていて、自分の状態に似た例が出てこなかったので、例えば「肘が曲がっているのはどうなんだろう」などと疑問に思うのですが分からず、細かいことをもっと知りたいなと入院中から思っていました。今はSNSで同じ疾患の方の情報を見ていますが、その当時は知らなかったので入院中の3週間は不安で毎日泣いて看護師さんに慰めてもらっていました。

もし、SNSの存在を知っていたら前向きな心をもって治療に取り組めていたかなと思いますね。

点滴治療が選べないことへのショック

レアズ編集部:治療が始まる際に、治療の必要性などはすぐに理解できましたか?

中湊:いざ入院してからは先生の説明と、自分で病気について調べることですぐに理解はできました。

ただ、先生が治療法について説明したときに「ステロイドはおそらく使います、免疫抑制剤を内服か点滴のどちらかにしますが、点滴の方が効き目が強いです」と聞いていたので、点滴がいいなと思っていました。しかし、上半身の皮膚が固く腫れあがっていたので点滴の針がさせる状態ではなく、採血も足から行っていたので、点滴は困難だと先生が判断されたときには、頭では理解はできていでも、もう無理なのかとショックを受けました。

今退院して2か月ちょっと経ちますが、ステロイドは入院中と比較して3mg減量できましたし、免疫抑制剤は引き続きセルセプトを内服しています。まだ握力が弱く、グーができないことはありますが、入院をした頃に比べると指が少し動くようになりました。ただ、右の肘はまだ突っ張っている感覚があります。

知っていれば早く気付けたかも

レアズ編集部:新型コロナウイルスの流行とも重なってすぐに病院にかかれなかったというのもあったとおっしゃっていましたが、他にも今考えると全身性強皮症の症状だったと思うことはありますか?

中湊:今年の3月に体が真っ赤に腫れあがり、発疹、蕁麻疹のようなものが体中に出ることが多くなったんですが、アレルギーだと思っていました。

また、去年の8月に逆流性食道炎になり治療を受けましたが、その時は逆流性食道炎が全身性強皮症の初期症状として多いことを知る由もなかったので、その治療を行っただけでしたが、今思うとあれがこの病気の最初の症状だったんだと思います。あの時に全身性強皮症の初期症状だということを知っていて、抗体検査を受けていれば腕などにも症状が出なかったのかなと思うことがあります。

あとは今年の1月から3分くらい歩くと道端にしゃがみこんで歩けなくなる、会社に着くと10分くらい呼吸が整わず周りからも「大丈夫?」と心配されたことがありました。元々運動が好きで去年の6月まではスポーツジムで3~5km止まらずに泳いでいたので、自分でも今までにない息の上がり方だなと思っていましたが「年ですかね」と笑っていました。

レアズ編集部:それは全身性強皮症の症状である間質性肺炎になっていたということですか?

中湊:入院時の検査の数値を見ると若干間質性肺炎になりかけていると先生に言われましたが、そこから前回の通院の際も変化はないので、まだ幸い間質性肺炎はなっていないです。

ただ対処療法しかない私の病気では寛解したと思ったら再発されている方がほとんどで、間質性肺炎になる方も多いのを見ていると、今までのようにフルタイムで総合職として働くのはなかなか難しいので、無理のない範囲でできる仕事をしようという気持ちはあります。

SNSに救われ、発信する側へ

レアズ編集部:レアズ編集部今は中港さんも情報の発信をされているんですよね?

中湊:月に1~3回程度不定期ですが、FacebookとInstagramとTwitterで発信しています。同じ病気の方をフォローしているので、その方々の病気に関する情報や体がうまく動かない中で生活をどう工夫して生活の質(QOL)を落とさずに日常を楽しんでいるのかを拝見し、ものすごい励みになるなと実感しています。

レアズ編集部:その方々との交流がご自身の治療に対するモチベーションの維持にもつながりそうですね。

中湊:SNSで交流を持っている方には、薬の副作用で苦しんでいらっしゃる方もいれば、減薬して少し楽になった方もいらっしゃるのですが、みなさんできることを無理しない程度に一生懸命、丁寧に日々の生活をされているので参考になっています。

あと、両親も高齢で私の病名も覚えられないですし、友達にも話せないことも多いので、気持ちを打ち明けたり、同じ状況の方の投稿を見たりして助けられています。

レアズ編集部:情報発信をしていくうえでポリシーはありますか?

中湊:まだ病歴が浅いので“新米”ではありますが、不安な気持ちやネガティブな気持ちになったときは書かないということです。私の場合、調子がよくないときにネガティブな気持ちを文章に残すと余計にネガティブになってしまうので、ポジティブな内容、もしくは感情を入れすぎないように注意して事実をありのまま書くようにしています。同じ病気の方や膠原病に類似した病気の方は、私の病状をつづった投稿を読み、心情を察して下さり、「ここでは弱音を吐いていいんだよ、一緒に頑張ろうね」と言った励ましを何度かけてくれました。みなさんのお言葉によって、この数ヶ月救われていることは事実で、本当にありがたく感じています。

いつか、趣味や仕事も

レアズ編集部:SNSの交流などで前向きな気持ちで治療に取り組めるようになり、新たに目標とされていることはありますか?

中湊:そうですね。すごく頑張ってフルタイムで働いていた頃は仕事を辞めたいな、のんびりできたらいいなとか思うこともありましたが、病気とはいえ、時間がこれだけあると、社会と接していないとつまらないなと思います。今は新型コロナウイルスの問題もありますし、免疫を下げる薬を飲んでいるので感染症にかかりやすいとお医者さんから言われて、外出も基本的に控えているのですが、社会の一員として働きたいという思いが強くなり、1年後には週1回でも働けたらいいなと思っています。

他には、元々手先を動かすのが好きで、発症前は飼っている犬のためにケーキを作ったり、小物を作ったりするのが趣味でした。それが、今は手指が思うように動かなくなってしまったので、悲しい気持ちとまたできるようになったらいいなという気持ちはあります。

あとは、人生でこれだけ時間を持て余すことはないというくらい時間があるので、語学などを始めるのもいいなと思っています。SNSでつながっている皆さんも趣味や好きなものを楽しんでいらっしゃるので、刺激をもらっています。

視野を広く、長い目で

レアズ編集部:レアズ編集部今日はお話を聞かせていただきありがとうございました。最後に同じように闘病されている方に向けてメッセージをお願いします。

中湊:私と同じように不安に思っている方は、是非同じ病気の方とSNSでつながってみてください。同じ病気でSNSを発信されている方の過去にさかのぼり、病気と闘っている姿や日常を穏やかに過ごされている姿を見ると、視野を広く、長い目でこの病気と向き合おうという気持ちになれるので、いろいろな方の投稿を見て欲しいと思います。

中湊あやさん ご略歴
40代女性。20代より国会の議員会館で公設秘書をしていた。家族の事情があり2019年の1月に関西に戻りインフラ・資材系の会社でIRの職に転職。2020年5月に全身性強皮症の確定診断がつき現在はSNSで情報発信を行っている。
SNSアカウント:
Facebook @AyanaFromJapan
Instagram @ayanafromjapan
Twitter @OvKDB6OIMOjEA03

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