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はくしつしょうしつびょう
白質消失病vanishing white matter disease

小児慢性疾患分類

疾患群11
神経・筋疾患
大分類8
遺伝子異常による白質脳症
細分類28
白質消失病

病気・治療解説

概要

Vanishing white matter disease(以下、VWM)は、小脳失調や痙性麻痺が緩徐に進行し、感染や頭部外傷を契機に症状が急性増悪することがある常染色体劣性遺伝疾患である。頭部MRIで、大脳白質全体あるいはその一部が、脳脊髄液とほぼ同じ信号強度を呈する。Childhood ataxia with central nervous system hypomyelination (CACH)とも呼ばれ、主に小児期に発症するが、近年、成人発症例も報告されている。

疫学

小児期白質変性疾患の中で最も高頻度だが、正確な頻度は
不明

病因

原因として、eukaryotic translation initiation factor 2B (elF2B)と呼ばれる蛋白質をコードする遺伝子(EIF2B)が同定されている。elF2Bは5つのサブユニット(α,β,γ,δ,ε)からなり、いずれの遺伝子異常によってもVWMを引き起こす。EIF2B はmRNAの翻訳開始の重要な調節因子だが、大脳白質病変を引き起こす理由は解明されていない

症状

幼児期に発症し、慢性進行性の神経障害(小脳失調、腱反射亢進を伴う痙性麻痺、知的障害、視力障害、てんかん)を来たす。軽度の頭部外傷や感染に伴う発熱、恐怖のエピソード後、急激に運動機能障害が進行することがある。その他、卵巣機能不全、成長障害、白内障、肝脾腫、膵炎、腎低形成を合併することがある。成人発症例も報告されているが、一般的に発症が早い程重症で、数年の経過で死亡することがある

診断

臨床所見および以下のMRI所見から臨床診断する。頭部MRI T2, FLAIRで大脳白質のびまん性、対称性高信号を呈する。進行すると同部位が希薄化、嚢胞化し、脳脊髄液と同程度の信号強度となる。また、遺伝子解析によってEIF2Bの変異を同定する

治療

特異的治療はない。激しい接触を伴うスポーツを避ける、抗生剤やワクチン接種を含めた感染対策や発熱時に解熱薬を使用するなどが、急性増悪を避ける手段として考えられる。また、四肢の痙性や失調に対しリハビリや筋緊張緩和薬、てんかんに対し抗てんかん薬を使用する

予後

発症後2,3年で死亡することが多いが、数か月から数十年の経過を示すものもある

参考文献

van der Knaap, M. S., J. C. Pronk, et al. (2006). “Vanishing white matter disease.” Lancet Neurol 5(5): 413-423.

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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