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あくせいきょうせんしゅ
悪性胸腺腫Malignant thymoma

小児慢性疾患分類

疾患群1
悪性新生物群
大分類5
固形腫瘍(中枢神経系腫瘍を除く。)
細分類65
悪性胸腺腫

病気・治療解説

概念

胸腺上皮由来の悪性腫瘍で種々の組織型を含んでいる概念である。病理学的には、腫瘍性上皮細胞に高度の異型が見られないものを胸腺腫、腫瘍性上皮細胞が明らかな異型を示すものを胸腺癌という。また、胸腺腫の中にも周囲組織へ浸潤し遠隔転移をきたす可能性のあるものが含まれている。

疫学

胸腺神経内分泌腫瘍を含めた胸腺上皮性腫瘍は10万人あたり0.15人/年と報告されている。また、小児がん学会全数把握事業の集計結果によると、2009年では全小児がん2095例中0例、2010年では2065例中2例、2011年では1802例中0例と極めて稀である。尚、組織学的頻度はB2型胸腺腫が20-35%、AB型胸腺腫が20-35%、胸腺癌が10-25%、B3型胸腺腫が7-25%、B1型胸腺腫が5-10型、A型胸腺腫が5-10%である。

症状

胸腺腫では、自己抗体性の傍内分泌症候群(重症筋無力症、赤芽球癆、低グロブリン血漿など)を呈することが多い。しかしながら、胸腺癌では原則的に免疫学的活性は無いため、咳嗽、胸痛、体重減少、倦怠感、呼吸困難感や横隔神経麻痺、上大動脈症候群などで発見されることが多い。

診断

切除検体の病理診断に基く。
胸腺腫では、A型、AB型、B1型、B2型、B3型に分類される。
また、胸腺癌では、扁平上皮癌、類基底癌、粘表皮癌、リンパ上皮腫様癌、肉腫様癌、明細胞癌、乳頭状腺癌、非乳頭状腺癌、t(15;19)転座を伴う癌、未分化癌に分類される。

治療

外科的切除が第一選択となる。
胸腺腫の場合、標準術式は胸骨正中切開による胸腺と腫瘍の摘出術、また、浸潤がある場合には浸潤臓器を含めた合併切除が必要である。尚、重症筋無力症が合併している症例では、拡大胸腺摘出術に準じた術式を行う。
局所進行例で完全切除が困難な場合には術前化学療法が行われる。Cisplatinを中心に、adriamysine、 vincristine、cyclophosphamide、タキサン系薬剤を組み合わせた多剤併用療法(ADOC療法やCAMP療法)の有効性が報告されている。ステロイドパルス療法の有効性も報告されているが、効果は一過性である。
術後の補助療法として放射線治療が行われることが多いが、完全切除後の補助療法としての放射線治療の適応は確立していない。
尚、完全切除が難しい、播種病変を認める場合には、可能な限りの外科的切除が生存延長に意義があると考えられている。
胸腺癌の場合、完全切除が得られなければ生存延長は得られないと考えられており、胸腺腫と違って亜全摘と言う外科治療は成立しない。胸腺癌に対する化学療法のレジメンで確立したものはないが、胸腺腫に準じた化学療法が妥当とされる。

予後

胸腺腫の10年生存率は、A型で100%、AB型で80-90%、B1型で>90%、B2型で50-100%、B3型で50-70%と報告されている。また、胸腺癌では組織型により若干の差はあるが、10年生存率は20%程度とされている。

参考文献

臨床・病理 縦隔腫瘍取扱い規約 金原出版 2009年

外科病理学(第4版) 向井清、真鍋俊明、深山正久 編集 文光堂 2006年

大熊裕介. 胸腺癌に対する化学療法. 癌と化学療法. 39(5): 702-707, 2012

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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