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先天性筋ジストロフィーCongenital muscular dystrophy

小児慢性疾患分類

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病気・治療解説

概要

乳幼児期早期に発症する筋ジストロフィーの総称である.日本では福山型(Fukuyama type CMD:FCMD)が最も多い.その他Ullrich型先天性筋ジストロフィー(Ullrich congenital muscular dystrophy: UCMD),LMNA遺伝子変異によるもの(lamin related CMD:L-CMD)やメロシン欠損症などが存在するが、病因が同定できない例も存在する.福山型の病因であるfukutin遺伝子などは糖鎖修飾に関与する酵素をコードしており、それらの遺伝子変異によって生じる先天性筋ジストロフィーをα-ジストログリカノパチー(α-dystroglycanopathy)と総称する.

病因

病因遺伝子として報告されているものは下記などが知られており、非常に多岐にわたる.
FKTN, LAMA2, COL6A1, COL6A2, COL6A3, ITGA7, POMT1, POMT2, POMGNT1, FKRP, LARGE, POMGNT2/GTDC2, B3GALNT2, B3GNT1, SGK196/POMK, TMEM5, GMPPB, DPM1, DPM2, DPM3, DOLK, ISPD, DAG1, INPP5K, POMT1, POMT2, POMGNT1, FKRP, LARGE, OMGNT2/GTDC2, 3GALNT2, B3GNT1, SGK196/POMK, TMEM5, GMPPB, DPM1, DPM2, DPM3, DOLK, SPD, DAG1, INPP5K, SEPN1, LMNA, RYR1, SYNE1

疫学

日本における患者数は不明である.海外においても限られた情報しか存在しないが、10万あたり0.99人という報告が
ある.

臨床症状

乳幼児期早期より、運動発達遅滞、筋力低下、筋緊張低下を主症状とする.一般に病気の進行に伴い側弯症や関節拘縮などの骨格変形を伴うことが多い.いったん獲得した場合においても歩行不能となる場合がある.呼吸筋障害や心筋障害による慢性呼吸不全、心伝導障害、心不全を認める例も少なからず存在する.嚥下障害を認める場合もある.

検査所見

血清CK:筋の壊死を反映し,大半の筋ジストロフィーで高値を示す.その程度は筋ジストロフィーのタイプによっておよそ決まっている.

針筋電図:安静時活動電位,低電位,最大振幅の低下,早期動員など非特異的な筋原性の所見を認める.

骨格筋画像:CT,MRIは骨格筋の萎縮,肥大,脂肪化の評価に有用である.タイプにより障害を受ける筋に違いを認める傾向がある.

筋病理:現在においても確定診断に最も有効な評価法であり,免疫組織学的手法などを用いることでさらに病態に迫る所見を得ることが可能である.侵襲的な検査であるため,適応をよく検討したうえで施行する.

遺伝子診断:福山型では確定診断のため遺伝子診断を保険診療のなかで行うことができる.

診断の際の留意点

遺伝子解析技術の進歩によって多くの遺伝子変異が同定されており、遺伝子診断によって確定診断が得られる場合が増えてきている.遺伝子解析の前には遺伝学と該当する疾患に精通した医師による検査前カウンセリングが望ましい.診断後の家族への心理的な面も含むケアも非常に重要である.必要に応じて専門医への紹介も検討する.

治療

根本的治療法は現在までのところ見いだされていない.必要に応じて、リハビリテーション、呼吸障害、心機能障害や側弯や関節拘縮に対する治療を行う.

合併症

呼吸障害、心筋症、心伝導障害、嚥下障害、側弯症、消化管障害、骨粗鬆症などを合併しうる.

予後

予後は病型や症例により異なる.筋力低下,運動機能障害はADL,QOLに大きな影響を与えるが,呼吸不全,心機能障害,嚥下障害が主に生命予後に影響する.定期的な機能評価,合併症検索と適切な介入が重要である.

成人期以降の注意点

ケアの向上によって先天性筋ジストロフィーの生命予後は改善しているが、長期予後に関するデータは乏しい.定期的な呼吸機能、心機能、ならびに嚥下などの評価とそれらに対する治療を小児期から成人期にわたり包括的に行う姿勢が重要である.

参考文献

Wang CH, et al. Consensus statement on standard of care for congenital muscular dystrophies. J Child Neurol. 2010;25(12):1559-81.
Fu XN, et al. Genetic and Clinical Advances of Congenital Muscular Dystrophy Chin Med J (Engl). 2017; 130: 2624–2631.

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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