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あおいろごむまりようぼはんしょうこうぐん
青色ゴムまり様母斑症候群Blue Rubber Bleb Nevus Syndrome

小児慢性疾患分類

疾患群16
脈管系疾患
大分類1
脈管奇形
細分類1
青色ゴムまり様母斑症候群

病気・治療解説

概念

Bean症候群とも呼ばれ、全身の皮膚および消化管を中心とした内臓に生じる静脈奇形を特徴とする。皮膚病変がゴム乳首に似ており、青色がかっているため、1958年にWilliam Beanによりblue rubber bleb nevus syndrome (青色ゴムまり様母斑症候群)と命名された。全身の皮膚以外に、消化管をはじめとする多臓器に病変が認められ、ときに重篤な出血性合併症を起こす1)。また、奇形血管内において局所的な凝固因子消費が生じ、全身性血液凝固異常を合併することがある。多くは散発例だが遺伝性の場合には常染色体優性遺伝を示す。

病因

血管奇形のうち低流速である静脈奇形に分類される。血管新生に関わるTIE2遺伝子の関与を示唆する報告もあるが、多数例においての確認は行われておらず、原因遺伝子として確定していない2)。今後の病因の解明が待たれる。

疫学

医中誌にて”blue rubber bleb nevus症候群””青色ゴムまり様母斑症候群”を検索したところ、症例報告としては約80例があり、小児の報告は約半数であった。また、本邦からの90例の集計3)がまとめられている。そのうち6例に家族歴があったとされる。

臨床症状

0.1~5cm 程度の青色~黒色のゴム乳首様と例えられるような皮膚の静脈奇形が多発してみられることが特徴的であるが、小児期には皮膚病変が顕著でなく、成長とともに病変が目立つようになることが多い。静脈奇形内に静脈石を形成したり血栓性静脈炎を併発したりすると疼痛が出現する。
また皮膚のみでなく、中枢神経、肝臓、脾臓、腎臓、肺、心臓、甲状腺、筋肉などにも病変を伴う。臨床的に最も重要なのは、消化管に多発する静脈奇形により、様々な程度の消化管出血と鉄欠乏性貧血を生じることである。消化管病変が先行し、原因不明の消化管出血とされる症例もある。

検査所見

消化管病変の検索には内視鏡、とくにカプセル内視鏡が有用である。他の臓器の検査にあったてはCTやMRIなどの画像検査が用いられる。
血液検査では慢性的消化管出血に起因する鉄欠乏を伴う小球性貧血を認めることが多い。また、慢性的な血液貯留によって静脈奇形内での凝固因子の消費が生じ、D-Dimerの上昇、フィブリノーゲンや血小板数の低下、FDPの上昇などを示すことがあり、localized intravascular coagulopathy (LIC)と呼ばれ、カサバッハ・メリット現象とは区別される。
病変部位の病理学的所見は結合組織中に拡張した血管を認め、血管壁は薄く内腔は不規則で、平滑筋細胞を欠損していることも多い。
診断の際の留意点
臨床診断が中心であるが、とくに小児期では皮膚病変が乏しく、消化管病変による消化管出血と鉄欠乏性貧血が先行する例があり注意を要する。

治療

消化管粘膜の多発性静脈奇形からの慢性出血により鉄欠乏性貧血を生じ、大量出血時は輸血を要する。消化管病変に対しては内視鏡的硬化術やレーザー凝固術、外科切除などが試みられる。血栓や静脈石による疼痛に対しては弾性ストッキングなどを用いた圧迫療法が行われる。
内科的治療としてステロイド、インターフェロン、プロプラノロールが用いられているが、その効果は限定的である。保険適応外であるがmTOR阻害剤(シロリムス、エベロリムス)などが試みられ有効性が報告されており、今後の臨床データの集積が待たれる4), 5)。

合併症

大量消化管出血や腸重積症などの合併症が報告されている。中枢神経病変により痙攣や麻痺などが生じることもある。

予後

全身の多臓器におよぶ静脈奇形は完治することなく、生涯にわたり出血や消費性凝固障害、疼痛などの原因となる。
成人期以降の注意点
多発性の消化管内静脈奇形を合併するため、しばしば慢性の鉄欠乏性貧血を生じる。また全身の皮膚にも自然消退することのない静脈奇形が多発するため、整容的な問題を残しうる。

参考文献

1) 血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン2017. 平成26-28年度厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業「難治性血管腫・血管奇形・リンパ管腫・リンパ管腫症及び関連疾患についての調査研究」班
2) Nobuhara Y, et al. TIE2 Gain-of-Function Mutation in a Patient with Pancreatic Lymphangioma Associated with Blue Rubber-Bleb Nevus Syndrome: Report of a Case. Surgery Today. 2006;36:283-286.
3) 三上栄ほか:Blue rubber bleb nevus syndromeの小腸血管腫に対しクリッピングが有効であった1例. Gastroenterol Endosc 53: 275-282, 2011.
4) Yuksekkaya H, et al. Blue rubber bleb nevus syndrome: Successful treatment with sirolimus. Pediatrics 2012;129:e1080–e1084.
5) Salloum R, et al. Response of Blue Rubber Bleb Nevus Syndrome to Sirolimus Treatment. Pediatr Blood Cancer. 2016;63:1911-1914.

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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