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ぜんくびーさいぼうきゅうせいりんぱせいはっけつびょう
前駆B細胞急性リンパ性白血病B-cell precursor lymphoblastic leukaemia

小児慢性疾患分類

疾患群1
悪性新生物群
大分類1
白血病
細分類1
前駆B細胞急性リンパ性白血病

病気・治療解説

概要

本疾患は、骨髄においてリンパ芽球が増殖する造血器の悪性腫瘍性疾患であり、急性リンパ芽球性白血病(Acute lymphoblastic leukemia、ALL)と呼ばれる。芽球の増殖により正常な造血が損なわれるほか、芽球の浸潤によるリンパ節や肝臓・脾臓などの腫大がみられることがある。芽球は中枢神経や精巣へと浸潤することや、皮下腫瘤を形成することもある。
白血病の診断は骨髄穿刺での芽球の検出によってなされ、芽球比率が低い場合は、25%以上でALL、25%未満でリンパ芽球性リンパ腫の骨髄浸潤と診断する。骨髄標本の染色所見および白血病細胞の表面抗原検査により前駆B細胞、成熟B細胞、T細胞、NK細胞などの細分類に診断される1)。

疫学

ALLは小児期に発症する悪性腫瘍の中で最も頻度が高く、本邦での年間の新規の発症数は約500人と推定される。発症年齢のピークは2-6歳であり、やや男児に多いとする報告が多い。前駆B細胞ALLが約80-85%、T細胞ALLが約10-15%、成熟B細胞ALLが約5%である。T細胞ALLは年長児、男児の頻度が他の病型に比べやや多い。

症状

白血病が特異的な症状で発見されることは少なく、不特定の症状が長引くことが疾患を疑う契機になる。比較的多い症状は芽球の増殖・浸潤によって起こる疼痛(骨痛)、リンパ節腫大、肝腫大、脾腫大、頭痛、精巣腫大や造血の抑制の由来する発熱、倦怠感、易出血性(鼻出血、皮下出血)などである。これらの症状が長引いた際に血液検査が行われ、診断が疑われる契機になることが多い。
非特異的な症状や所見であっても、長引くもしくは反復する場合には本疾患等を鑑別に考え採血を施行することが必要である。

採血では、白血球数は増加・減少のいずれも起こりうる。また、白血球数が正常であっても分画の異常(芽球の出現や好中球の減少)がみられることがあり、目視による分画測定が重要である。他に貧血、血小板減少、高LDH血症などがしばしばみられるが、一般的な血液検査では異常が見られない例もみられるため、血液検査が正常であるというだけでは本疾患を否定することはできない。疾患の診断には骨髄検査が必須である。

治療

小児血液学会(現、小児血液・がん学会)では、小児白血病・リンパ腫診療に関するガイドラインを作成した(http://www.jspho.jp/journal/guideline.html)。
小児ALLでは、複数の予後因子を組み合わせて再発リスクを予測し、それぞれのリスクに応じて3-4群に層別化して治療強度を決定する。主な予後因子は、年齢や初診時白血球数、白血病細胞の分子遺伝学的な異常と、初期治療の反応性である2)。
治療として、まず、ステロイド、ビンクリスチン、アスパラギナーゼの3剤もしくはアントラサイクリン系薬剤を加えた4剤を用いた寛解導入療法が行われる。寛解導入療法に続いて交叉耐性の少ない代謝拮抗剤を中心とした早期強化療法が行われる。
以後の強化療法には様々な組み合わせが用いられており、CNS浸潤の対策として用いられるメトトレキセートの大量療法および髄腔内投与(髄注)と、寛解導入療法と類似の系統の薬剤を組み合わせた再寛解導入療法が重要な要素である。
強化療法は原則として入院で行われ、その期間は8-10か月が必要である。強化療法の終了後には、メルカプトプリンとメトトレキセートの内服を基本とした1-2年の維持療法が行われる。維持療法には一定の期間が必要なことが複数の臨床試験で確認されている3)。
同種造血幹細胞移植はALLに対する最も強力な治療であるが、晩期合併症などの問題が重要なため、適応は再発高リスク群の一部の患者に限定されている。成熟B細胞ALLは他のALLとは異なり、短期に強力な化学療法を行う悪性リンパ腫型の化学療法が奏功する4)。

予後

小児ALLの治療成績は年々向上し、現在ではB前駆細胞ALLでは約90%、T細胞ALLでは約80%の長期生存率が得られている5, 6)。しかし、乳児早期に発症したALL7)や、初期治療に対する反応性が不良のALL8)の長期生存率は40~60%に留まっている。成熟B細胞ALLは、短期集中型の治療で80%を超える長期生存率が達成されている。

参考文献

1) Iwamoto S, Deguchi T, Ohta H, et al. Flow cytometric analysis of de novo acute lymphoblastic leukemia in childhood: report from the Japanese Pediatric Leukemia/Lymphoma Study Group Int J Hematol 94: 185-92, 2011
2) Inaba H, Greaves M,Mullighan CG. Acute lymphoblastic leukaemia Lancet 381: 1943-55, 2013
3) Toyoda Y, Manabe A, Tsuchida M, et al. Six months of maintenance chemotherapy after intensified treatment for acute lymphoblastic leukemia of childhood J Clin Oncol 18: 1508-16, 2000
4) Woessmann W, Seidemann K, Mann G, et al. The impact of the methotrexate administration schedule and dose in the treatment of children and adolescents with B-cell neoplasms: a report of the BFM Group Study NHL-BFM95 Blood 105: 948-58, 2005
5) Schrappe M, Valsecchi MG, Bartram CR, et al. Late MRD response determines relapse risk overall and in subsets of childhood T-cell ALL: results of the AIEOP-BFM-ALL 2000 study Blood 118: 2077-84, 2011
6) Conter V, Arico M, Basso G, et al. Long-term results of the Italian Association of Pediatric Hematology and Oncology (AIEOP) Studies 82, 87, 88, 91 and 95 for childhood acute lymphoblastic leukemia Leukemia 24: 255-64, 2010
7) Pieters R, Schrappe M, De Lorenzo P, et al. A treatment protocol for infants younger than 1 year with acute lymphoblastic leukaemia (Interfant-99): an observational study and a multicentre randomised trial Lancet 370: 240-50, 2007
8) Schrappe M, Hunger SP, Pui CH, et al. Outcomes after induction failure in childhood acute lymphoblastic leukemia N Engl J Med 366: 1371-81, 2012

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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