パーキンソン病患者の体重減少、エネルギー代謝の変化が関与
藤田医科大学は12月2日、パーキンソン病患者に見られる体重減少の原因が、体脂肪の減少とエネルギー代謝の異常にあることを解明したと発表しました。
パーキンソン病(指定難病6)は、振戦(ふるえ)、動作緩慢、筋強剛(筋固縮)、姿勢保持障害(転びやすいこと)などを特徴とする進行性の疾患です。パーキンソン病の患者さんには頻繁に体重減少が見られますが、その背景にある具体的な身体の変化やエネルギー代謝の異常については、これまで十分に解明されていませんでした。
今回、研究グループは、藤田医科大学病院に通院するパーキンソン病患者さん91名と健常者47名を対象に、体組成と血液中の代謝物を詳細に解析。体組成を分析した結果、パーキンソン病患者さんでは筋肉量は健常者と同程度に保たれている一方で、体脂肪のみが選択的に減少していることが明らかになりました。このことから、パーキンソン病における体重減少は、脂肪組織の減少によって引き起こされる特徴的な変化であることが確認されました。
また、血液中の代謝物を分析したところ、患者の体内では糖の代謝が低下し、その代わりに脂質やアミノ酸の代謝が亢進していることが分かりました。これは、通常とは異なり、糖を利用したエネルギー産生が十分に機能しない状況で、脂質やアミノ酸を代替エネルギー源として積極的に利用する「エネルギーシフト」が生じていることを示唆しています。さらに、BMIが低い患者さんほど、脂質が分解されてできるケトン体が増加しており、糖代謝の低下と脂質代謝の亢進という異常がより強く認められました。

以上の研究成果より、パーキンソン病の患者さんで起こる体重減少の背景に、糖代謝の停滞と脂質およびアミノ酸代謝の亢進が同時に生じる特徴的なエネルギー代謝異常が存在し、パーキンソン病に関連した代謝変化が体重減少に寄与している可能性が示されました。今後は栄養介入や代謝に着目した治療戦略の構築に寄与することが期待されます。
なお、同研究の成果は、英国医学ジャーナル「Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry」オンライン版に掲載されました。
