肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療薬エアウィンが発売
MSD株式会社は8月18日、肺動脈性肺高血圧症(Pulmonary arterial hypertension: PAH)の治療薬として、アクチビンシグナル伝達阻害剤「エアウィン皮下注用45mg、同60mg(一般名:ソタテルセプト(遺伝子組換え))」を発売したことを発表しました。
肺高血圧症は、心臓から肺へ血液を送る肺動脈の血圧が高くなる病気です。肺動脈の血圧が高くなると、心臓の右心室に大きな負担がかかり、進行すると最終的に右心不全に至ります。治療をせずに放置した場合、数年以内に命に関わる重篤な病気です。
肺動脈性肺高血圧症(指定難病86、PAH)は肺高血圧症の一種で、肺血管リモデリングなどが生じることで肺血管が狭くなり発症します。2023年度の認定患者数は4,682名と、その数は年々増加しています。近年、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療薬は進歩し、既存薬の併用療法によって治療成績は改善していますが、予後には課題が残されており、より効果的な治療選択肢が強く求められていました。
エアウィンは、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の主要な病態である肺血管リモデリングを標的とした、これまでにない新しい作用メカニズムを持つ治療薬です。肺血管リモデリングとは、肺血管を構成する細胞が異常に増殖し、血管の壁が厚くなることで、血管が狭くなる状態を指します。同剤は、細胞の増殖を促進するアクチビンシグナル伝達を阻害することで、シグナル伝達のバランスを改善し、肺血管平滑筋細胞の増殖を抑制することで血行動態を改善する効果が期待されます。
非臨床モデルでの試験では、エアウィンによる血管壁の厚さの減少、右心室リモデリングの減少、および血行動態の改善が認められています。同剤は、標準的なバックグラウンド療法を受けている肺動脈性肺高血圧症(PAH)の成人患者さん(WHO機能分類クラスIIおよびIII)を対象とした海外および国内の第3相試験の結果に基づき、2025年6月24日に製造販売承認を取得しました。
MSD代表取締役社長のプラシャント・ニカム氏はプレスリリースにて、「本日、PAHの新たな治療薬として『エアウィン®』を発売できたことを大変嬉しく思います。PAH治療薬としては肺の血管を広げる薬が主に使用されていますが、『エアウィン®』はPAHの根本原因を標的とした初めての治療薬です。この革新的な医薬品を通じて、PAHの患者さんに新たな希望をお届けできるものと確信しています。」と述べています。