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巨細胞性動脈炎に関与する新たな遺伝子群を特定、新規たな治療法や診断法の開発へつながる可能性

東京都医学総合研究所の研究グループは1月22日、難治性疾患である巨細胞性動脈炎に関与する新たな遺伝子群を特定し、それらが果たす役割について新たな知見を得ることに成功したと発表しました。

巨細胞性動脈炎(指定難病41、GCA)は、血管炎の一種で、主に頭部の動脈がつまって症状を起こす疾患です。組織病理学的には肉芽腫性炎症とされ、多くの症例で多核巨細胞が出現することが知られています。その発症や病状進行の原因については十分に理解されていませんが、発症には遺伝的要因と環境要因の両方が関与しており、特に免疫システムの異常な活性化が主な原因と考えられています。

現在の治療では主に免疫抑制薬が用いられますが、これらは正常な免疫応答までも抑制してしまうため、GCA特有の反応を標的とする新しい治療法の開発が求められています。これを実現するためには、疾患の発症要因や進行メカニズムを詳細かつ正確に理解することが不可欠だといいます。

画像はリリースより

今回、研究グループは、疾患の原因や進行メカニズムを分子レベルで明らかにするため、臨床検体を用いた網羅的な遺伝子発現解析を行いました。その結果、GCA血管は特徴的な遺伝子発現プロファイルを示すことが明らかになりました。また、この特徴的なプロファイルは、マクロファージや破骨細胞の機能に関連した遺伝子の発現が上昇していることが明らかになり、これらの ”GCA血管シグネチャー遺伝子群” がGCA血管の特徴を表していると考えられました。さらに、炎症を起こしている血管に存在する多核巨細胞には、マクロファージや破骨細胞に関連する遺伝子群が特徴的に発現していることを発見しました。

画像はリリースより

このGCA血管シグネチャー遺伝子群の一部は、高安動脈炎や結核性肉芽腫、サルコイドーシスなどの他の肉芽腫性炎症疾患にも共通して発現していることも判明。この結果は、肉芽腫性炎症疾患に共通する発症メカニズムが存在し、GCA血管シグネチャー遺伝子群の一部がそのメカニズムの一端を担っている可能性を示唆しているといいます。

以上の研究成果より、GCA血管シグネチャー遺伝子群を発現する多核巨細胞およびマクロファージが病態形成に重要な役割を果たしている可能性が示唆されました。さらに、これらの細胞や遺伝子産物は、GCAだけでなく他の肉芽腫性疾患とも共通する治療標的となる可能性も示唆されました。このことは、巨細胞性動脈炎の発症や病態メカニズムの詳細な解明に貢献するとともに、新たな治療法や診断法の開発につながる可能性が期待されるといいます。

なお、同研究の成果は、「Rheumatology (Oxford)」オンライン版に1月22日付で掲載されました。

出典
東京都医学総合研究所 プレスリリース

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