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小児単心室症の手術に細胞移植を併用、術後生存率を有意に上昇

岡山大学の共同研究グループは11月19日、予後不良とされている小児単心室症の治療に、細胞移植を併用することで、有意な生命の延伸効果があることを突き止めたと発表しました。

単心室症(指定難病210)とは、本来2つある心室が1つしか存在しないか、非常に小さい場合を指します。小児単心室症は、先天性心疾患の約1.5%を占め、約10,000人に1人の頻度で起こる病気です。

現在、心臓手術法の改良による技術的進歩は目覚ましいものの、生後直後に受ける心臓手術から6年間で心不全死や心臓移植を回避出来る頻度は約60%程度であるといいます。また、心臓手術後に退院となっても、日常生活には活動制限があり、さまざまな合併症の発症や繰り返す心不全による入院が患者本人を含めご両親にとっても大きな負担となっております。

研究グループは、2011~2015年までTICAP第1相試験とPERSEUS第2相試験を実施し、これまでに合計40人の患者さんに自分の心臓内に存在する幹細胞を培養し移植してきました。同時期に細胞移植を受けなかった53人の単心室症患者さんを比較。今回、2015年に最後の細胞移植を受けた患者さんから8年間経過した現在までの予後を国内8施設で追跡調査し、細胞治療法の長期における臨床的有用性について解析しました。

画像はリリースより

その結果、細胞移植群は心臓手術単独群に比べ、心不全の発症を避けることができる確率が高く、術後のさまざまな合併症が起こる頻度も明らかに低いことがわかりました。また、患者さんの生命予後は、4年目までは細胞治療を受けた全ての患者さんにおいて生存率が高く、特に心臓駆出率が50%以下と心臓機能が悪い症例においては、細胞治療を受けることによって心臓手術単独群に比べ、8年間以上にわたって、術後生存率が有意に高いことが明らかとなりました。

以上の研究成果より、心臓機能が悪い症例においては、8年間以上持続する細胞治療法による生命延伸効果が明らかとなりました。臓器提供者不足によって小児心臓移植が進まない国内の現状を打破する、新たな治療戦略となることが期待されるといいます。

なお、同研究の成果は、「Journal of the American Heart Association」のOriginal Research電子版に11月11日付で掲載されました。

出典
岡山大学 プレスリリース

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