色素性乾皮症D群の治療薬候補を同定
神戸大学をはじめとする研究グループは難治性の希少疾患である色素性乾皮症D群のうち特に重篤なR683W変異型について、ドラッグリパーポージング法と計算創薬を応用した「in silico DR法」により有効な薬剤を同定したと発表しました。色素性乾皮症にはこれまで治療法がなく、本研究成果は新たな治療法開発に大きく寄与すると期待されています。
色素性乾皮症(XP)は皮膚が紫外線によって炎症を引き起こし皮膚がんの多発などに繋がる遺伝性疾患であり、日本国内では約22,000人に1人の割合で発症すると推定されています。色素性乾皮症はA~G群とV型の8つのタイプに分類され、このうちD群(XPD)はERCC2遺伝子の変異が原因となり発症します。日本では3番目に多いタイプの群であり、日本の患者の55%で思春期の前に神経症状がみられます。発症の原因であるXPDタンパク質は傷ついたDNAの二重らせんをほどいて修復を促進する機能を持ちますが、変異が生じることで疾患へと繋がります。R683W変異はXPDタンパク質のATP結合能力の低下によりヌクレオチド除去修復(NER)能力が低下すると考えられています。そこで本研究グループはATPに結合する能力を回復させる薬の開発による治療を目指しました。
色素性乾皮症D群は希少難病であり患者数が少なく、開発コストを抑える必要がありました。そこで研究グループはこれまでに前臨床試験や臨床試験によって安全性が確認されている薬剤2,006種について、ドラッグリパーポージング(DR)法を計算創薬に応用した計算ドラッグリパーポージング(in silico DR)として応用しコストの削減を目指しました。正常型と変異型のXPDタンパク質の構造解析により、2006種の既存薬から有効性が高いと考えられる構造を持つ5種類の化合物を選別しました。実際にXPD R683W変異の皮膚線維芽細胞を用いて行った実験では4E1RCatでNER能が回復すると示されました。
出典元
熊本大学 研究ニュース