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関節リウマチや潰瘍性大腸炎の治療薬サラゾスルファピリジン副作用の薬疹リスク因子を発見

理化学研究所と新潟大学の共同研究グループは4月15日、関節リウマチ・潰瘍性大腸炎治療薬サラゾスルファピリジンの副作用である薬疹の発症に、特定のHLAアレルである「HLA-A*11:01」「HLA-B*39:01」「HLA-B*56:03」がそれぞれ独立して関連することを発見したと発表しました。

サラゾスルファピリジンは、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎(UC)やクローン病(CD)の治療薬として使用されていますが、副作用として一定の確率で薬疹が起こることが問題となっています。薬疹には、重症薬疹のスティーヴンス・ジョンソン症候群(SJS)や中毒性表皮壊死融解症(TEN)、薬剤性過敏症症候群(DIHS)、軽症薬疹である播種状紅斑丘疹型薬疹(MPE)など、さまざまなタイプが存在し、それぞれ症状や治療法も異なります。いずれの薬疹も重篤化した場合、後遺症または死亡につながる可能性があります。

これまで研究グループは、サラゾスルファピリジンを含むサルファ剤による薬疹にはHLA-A遺伝子のアレルのひとつであるHLA-A*11:01が関係することを見出していました。また、このアレルを持つ日本人の患者さんと同アレルを持たない患者さんを比較すると、アレルを持つ日本人の患者さんの方が9.8倍、薬疹が起こりやすいという結果が出ました。

しかし、このアレルだけでは、全ての患者さんの薬疹発症を予測することができず、サラゾスルファピリジンに特有の化学構造のみが原因の薬疹に関連する遺伝要因も不明でした。

今回、研究グループは、サラゾスルファピリジンによる薬疹患者さんのHLAアレルを対象とし、薬物治療開始前に薬疹の発症リスクを予測するバイオマーカーを同定するために、詳細なゲノム解析を行いました。

初めに、サラゾスルファピリジンによる薬疹患者さん15人のHLA-A、HLA-B、HLA-CおよびHLA-DRB1遺伝子のHLAアレルを調べ、日本人集団2,823人のデータと比較しました。その結果、対象者である薬疹患者さんのうち10人(67%)がHLA-A11:01、6人(40%)がHLA-B39:01、3人(20%)がHLA-B*56:03を保有しており、一般的な日本人集団における頻度より有意に高いことがわかりました。また、複数のアレルを1人で保有している患者さんがいることも明らかになりました。

HLA-A11:01、HLA-B39:01、HLA-B56:03のうちいずれかひとつでも保有している薬疹患者さんの割合は73%であり、日本人集団における保有率22%と比較して統計的に有意に高頻度でした。また、薬疹の種類別に解析したところ、薬剤性過敏症症候群(DIHS)患者さん(10人)のHLA-A11:01(P値=2.7×10-4、オッズ比=11.5)およびHLA-B*39:01(P値=1.2×10-5、オッズ比=22.2)の関連は特に強いことがわかりました。

HLA分子と薬物分子のドッキング・シミュレーションを用いて、特定のタイプのHLAに対する薬物の結合親和性を予測するため、サラゾスルファピリジンと、その代謝物であるスルファピリジン、スルファピリジン・ヒドロキシルアミン体、5-アミノサリチル酸のHLA-A11:01、HLA-B39:01、HLA-B*56:03との相互作用をそれぞれ解析しました。

その結果、いずれのHLA分子においてもサラゾスルファピリジンの結合自由エネルギーが最も低く、結合親和性が高いことを推定しました。これはサラゾスルファピリジンの化学構造が薬疹を引き起こす原因である可能性を示唆しています。

さらに、それぞれのHLA分子において、サラゾスルファピリジンが結合する確率が最も高い抗原提示部位をシミュレーションした結果、HLA-A11:01とHLA-B56:03では抗原提示部位のポケットA周辺に、HLA-B39:01ではポケットF周辺にそれぞれ結合する可能性が明らかになりました。この結果は、HLA-A11:01とHLA-B56:03が引き起こす薬疹とHLA-B39:01が引き起こす薬疹のメカニズムが異なっていることを示唆しています。

以上の研究成果より、HLA-A11:01、HLA-B39:01およびHLA-B*56:03のいずれかを保有する人と保有しない人を比較すると、保有する人はサラゾスルファピリジンによる薬疹を発症するリスクが高いことが示されました。薬疹発症患者さんにおける保有率から考えると、この3つのHLAアレルをバイオマーカーとして用いることで、サラゾスルファピリジンによる薬疹患者さんの約4分の3を説明できることになります。そこで、これらを組み合わせた遺伝子検査により、サラゾスルファピリジン治療開始前の薬疹発症リスクを予測することが可能となり、治療薬の種類を替えることで副作用に回避が期待されるとしています。

出典
新潟大学 プレスリリース


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