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ミトコンドリア病に対する遺伝子検査が保険適応へ

順天堂大学は11月14日、難病の診断と治療研究センターがミトコンドリア病研究の一環として行ってきたミトコンドリア病遺伝子パネルシーケンスが保険収載されたと発表しました。順天堂医院臨床検査部と協同して検査実施体制を整備し、2023年11月1日より、保険適応検査として契約施設からの検査依頼に対する受付を開始しています。

ミトコンドリアは、ほぼすべての細胞に存在する細胞小器官で、細胞が生きるのに必要なエネルギーを作り出す重要な役割を担っています。ミトコンドリアの機能低下によって引き起こされるミトコンドリア病は、先天性代謝異常症であり、5000人の出生あたり1人が発症すると考えられています。ミトコンドリアに問題が生じると、エネルギー産生が減少し、全身の臓器や器官にさまざまな影響を与え、けいれんや精神症状、筋力の低下、心筋症、肝臓・腎臓の機能低下、難聴などが現れます。

研究グループは、十数年にわたり、全国から寄せられるミトコンドリア病疑い症例の遺伝子診断に取り組んできました。

ミトコンドリア病の原因遺伝子はミトコンドリアDNAだけでなく、核のDNAにも多数存在おり、これらの原因遺伝子を効率よく一括で調べることができるミトコンドリア病遺伝子パネルシーケンスを開発しました。すでに600以上の症例を解析し、その有効性が十分に証明されています。

2020年1月~2022年12月の3年間に解析した449症例のうち、この検査方法で遺伝子診断がついた症例は105件(23.4%)でした。このうち核遺伝子変異を原因とする症例が38件(8.5%)、ミトコンドリアDNA変異を原因とする症例が67件(14.9%)でした。その他、臨床的意義不明バリアントをもつ症例が35件(7.8%)見つかり、これらの症例はさらに詳細な解析に進んでいます。

順天堂医院の臨床検査部では、保険適応のミトコンドリア病遺伝子検査として遺伝子パネルシーケンスを実施し、既知変異を報告します。その後、研究に同意されている患者さんについては、難病の診断と治療研究センターが行う研究において、より詳細に解析が進められます。

2023年7月1日より、順天堂医院の小児科・思春期科での外来診療を開始しており、ミトコンドリア病の診療から研究までをカバーできるようになったそうです。

ミトコンドリア病遺伝子検査が保険診療の対象となる一方で、同検査のみでは遺伝子診断がつかない患者さんも多数いるといいます。その中で、採血の際に研究参加への同意を表明(署名)頂いた患者さんに対しては、難病の診断と治療研究センターがミトコンドリア病研究として遺伝子解析を引継ぎ、遺伝子診断の確定を目指し、全ゲノムシーケンス・RNAシーケンス・機能解析実験などより詳細な解析を行うそうです。

出典
順天堂大学 プレスリリース

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