神経変性疾患の新規治療薬候補を同定
順天堂大学大学院の研究グループは、パーキンソン病 (指定難病6) をはじめとする神経変性疾患に対する新たな治療薬候補になり得る化合物を26種同定したと発表しました。今回同定された物質はオートファジー誘導物質であり、細胞内の不要なタンパク質を除去する機能に関係しています。
背景-パーキンソン病と脳内でのタンパク質分解機構
パーキンソン病は手足のふるえやこわばり等の運動障害がみられる神経変性疾患で、日本の指定難病にも指定されています。50歳以降に発症することが多く、徐々に症状が進行していくことが知られていますが、これまでに根本的な治療方法は開発されていません。研究グループはパーキンソン病患者の脳神経細胞に異常なタンパク質が蓄積していることに着目しました。細胞内の異常なタンパク質を分解・除去する機能としてオートファジーが知られています。実際に、パーキンソン病などの神経変性疾患患者ではオートファジー機能が低下していることが明らかになっています。そこで本研究では、オートファジーを誘導する機能を持つ化合物を探し、異常タンパク質を分解促進する化合物の特定を目指しました。
結果と展望-オートファジー誘導機能を持つ26の化合物を特定
過去の研究よりオートファジーを誘導する物質はいくつか発見されています。しかしこれらの物質がどのようにオートファジーに関わっているかは解明されていませんでした。そこで研究グループはまず、タンパク質の働きを阻害することが知られる400の化合物の働きを調べ、39の化合物がオートファジー誘導機能を持つことを明らかにしました。このうち、細胞毒性がないと知られている化合物は26ありました。さらに、今回の研究において、SMK-17という非常に珍しいオートファジー誘導機能を持つ化合物も同定されました。この化合物を用いて、パーキンソン病とハンチントン病のモデル細胞において十分なタンパク質分解が観察され、さらに神経細胞死も抑制することが明らかになりました。今回の研究では400化合物について、オートファジー誘導機能が調べられました。今後の研究でさらに大規模な化合物の調査ができれば、さらなる新規のオートファジー誘導機能を持つ化合物が同定でき、パーキンソン病の画期的な新規治療薬が見つかると期待されます。
出典元
順天堂NEWS