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マルファン症候群(MFS)の大動脈拡大抑制、特定の薬理作用が鍵になる可能性

東京大学は12月5日、マルファン症候群(MFS)モデルマウスの大動脈組織を用いて、アンジオテンシンII(Ang II)タイプ1(AT1)受容体阻害剤(ARB)による大動脈弁輪拡張症(AAE)の進展抑制には、AT1受容体のアンタゴニスト作用だけでは不十分で、インバースアゴニスト活性が必要であることを明らかにし、ARBのクラスエフェクトのみならずドラッグエフェクトに注目した治療選択が重要であることを見出したと発表しました。

マルファン症候群(指定難病167、MFS)は遺伝子の変異によって全身の結合組織に異常が生じる病気で、特に大動脈の根元が瘤状に広がる大動脈弁輪拡張症は、若年での突然死の原因となることが知られています。これまで、血圧を下げる薬の一種であるが治療に有効であると期待されてきましたが、従来の臨床試験では他の薬剤と比較して十分な優位性が示されておらず、新しい治療戦略が求められていました。

今回、研究グループは、マルファン症候群(MFS)のモデルマウスを用いて、大動脈が拡大する原因として、血管壁にかかる物理的な力であるメカニカルストレスが関与していることに着目しました。このストレスによって、血圧を上げるホルモンが存在しなくても、血管の受容体が勝手に活性化してしまうことが病気の進行に重要な役割を果たしていることが分かりました。

そこで、ARBの中でも「インバースアゴニスト活性」と呼ばれる、受容体の自律的な活性化を抑える作用を持つ薬剤であるカンデサルタンをモデルマウスに投与する実験が行われました。その結果、この特定の作用を持たないようにした薬剤を投与したマウスでは大動脈の拡大が抑えられなかったのに対し、通常のカンデサルタンを投与したマウスでは、血圧を下げる効果は同等であるにもかかわらず、大動脈の拡大が有意に抑制されました。

画像はリリースより

以上の研究成果より、同じ種類の薬であっても薬剤ごとの個別の特性であるドラッグエフェクトに注目した治療選択が重要である可能性が示されました。研究グループは今後、この知見をもとにした臨床研究を構想しており、外科手術を回避するなど患者の生活の質の向上が期待されるといいます。

なお、同研究の成果は、米国科学雑誌「Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology」に11月6日付で掲載されました。

出典
東京大学 プレスリリース

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