免疫抑制薬セルセプト、難治性ネフローゼ症候群に対する適応追加承認を取得
国立成育医療研究センターは10月23日、免疫抑制薬「セルセプト カプセル250、セルセプト懸濁用散31.8%(一般名:ミコフェノール酸モフェチル)」が、難治性のネフローゼ症候群に対する適応追加の承認を、9月19日付で厚生労働省より取得したと自発表しました。
ミコフェノール酸モフェチル(MMF)が、難治性の頻回再発型/ステロイド依存性ネフローゼ症候群に対するリツキシマブ投与後の寛解維持療法としての適応を取得したのは、世界で初めてのことです。
ネフローゼ症候群は小児の慢性腎疾患で最も頻度が高く、日本では年間約1,000人の小児が発症する原因不明の難病です。尿中に大量のタンパク質が漏れ出て、血液中のタンパク質が極端に少なくなることが特徴です。小児ネフローゼ症候群の多くはステロイドに反応しますが、その半数はステロイドの減量や中止により頻繁に再発するため、ステロイドの長期継続投与を余儀なくされます。その中でも約20%の患者さんが免疫抑制薬を用いてもステロイドを中止できない「難治性頻回再発型/ステロイド依存性ネフローゼ症候群」となり、新たな治療法の開発が強く望まれていました。
この難治性ネフローゼ症候群に対しては、以前よりリツキシマブ(Bリンパ球表面抗原CD20に対するモノクローナル抗体)の有効性・安全性が確認され、2014年8月29日に保険診療が可能となりました。しかし、リツキシマブ投与後に末梢血Bリンパ球が回復するのに伴い、多くの症例で再発をきたすことが課題でした。
今回、小児腎臓病研究グループは、MMFがリツキシマブ投与後の寛解維持療法として有効かつ安全であるかを検討する多施設共同二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験を、先進医療Bの枠組みで実施。この研究では、MMF(39例)またはプラセボ(39例)をリツキシマブ静注投与後に17か月間経口投与し、試験治療期間およびフォローアップ期間を通じての治療失敗(頻回再発、ステロイド依存性再発あるいはステロイド抵抗性再発)となるまでの期間を主要評価項目として分析しました。
その結果、統計学的に有意差はなかったものの、MMF群はプラセボ群に比べて治療失敗までの期間が長い傾向にあり(中央値:784.0日vs.472.5日、P=0.0694)、治療失敗の発生を41%抑制(ハザード比0.593)する効果が示されました。また、MMF群ではプラセボ群に比べて再発回数が少なく、ステロイド投与量を減少させる傾向もみられました。安全性については、両群間に大きな違いは認められていません。
今回の承認取得により、難治性の頻回再発型/ステロイド依存性ネフローゼ症候群に対するリツキシマブ投与後の再発が抑制され、患者さんのQOL(生活の質)の向上が期待されるといいます。MMFは、これまで世界的にネフローゼ症候群に対して適応外使用されていることから、今回の承認は意義が大きいと考えられています。
 
       
             
             
             
             
             
             
         
         
         
        