1. HOME
  2. 難病・希少疾患ニュース
  3. 潰瘍性大腸炎を対象とした腸内細菌叢移植療法で寛解導入率45.9%を達成

潰瘍性大腸炎を対象とした腸内細菌叢移植療法で寛解導入率45.9%を達成

順天堂大学とメタジェンセラピューティクス株式会社は9月29日、活動期潰瘍性大腸炎を対象とした「活動期潰瘍性大腸炎患者を対象とする抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法」の多施設共同臨床研究を実施し、有効性と安全性を確認したと発表しました。

潰瘍性大腸炎(指定難病97)は、大腸の粘膜に慢性的な炎症を引き起こす疾患で、腹痛や慢性下痢、血便などの症状により生活の質(QOL)が大きく損なわれまる疾患です。国内の患者数は20万人以上と推定されており、患者数は年々増加しています。

抗菌剤併用腸内細菌叢移植(A-FMT)療法とは、3種類の抗菌薬(アモキシシリン、ホスホマイシン、メトロニダゾール)を併用し、乱れた腸内細菌叢を極限まで減らしてクリアにした後、ドナー便から生成した腸内細菌溶液を内視鏡や注腸により注入し、バランスのとれた腸内細菌叢の構築を図る治療法です。

画像はリリースより

今回の研究は、厚生労働省が承認した先進医療Bとして、2023年1月から2025年8月20日にかけて、活動期潰瘍性大腸炎患者さん37例を対象に実施されました。その結果、A-FMT開始から8週間後の評価において、寛解導入率は45.9%に達し、主要評価項目を満たす有効性が確認されました。この寛解導入率は、従来の試験で報告されている偽薬(プラセボ)を使った場合の寛解率(約20%)に比べて、明らかに高い効果が認められています。また、症状が改善した有効率は70.3%でした。安全性評価においては、重篤な有害事象は一切認められず、安全性が担保された治療法であることも確認されました。

以上の研究成果は、活動期潰瘍性大腸炎に対するA-FMTの有効性と安全性を、国内で初めて臨床的に証明するものです。

順天堂大学大学院医学研究科腸内細菌療法リサーチセンターの石川大先生はプレスリリースにて、「潰瘍性大腸炎は患者さんの日常生活を大きく損なう難病です。私は「長期にわたる薬物治療に頼らず、根本的な治療法を確立できないか」という強い思いから、11年前に腸内細菌療法の研究を開始しました。研究を進める中で、ドナー条件の検討や適応の難しさなど、数多くの課題に直面しましたが、葛藤を抱えながらも試行錯誤を重ね、研究を継続してきました。今回の先進医療B臨床研究において、寛解導入率45.9%という高い有効性と安全性を示すことができました。これは大きな達成であり、研究に関わった多くの方々のご協力と支えがあってこそ成し得た成果だと考えています。今後はこれまでの成果を土台に、さらなる治療効果の向上を目指すとともに、社会実装を進めていきたいと考えています。潰瘍性大腸炎の患者さんに新たな選択肢を届けられるよう、これからも真摯に研究を続けてまいります」と述べています。

出典
順天堂大学 プレスリリース

関連記事