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心アミロイドーシスの早期診断のため、AIを活用したコンソーシアムを支援

アレクシオンファーマ合同会社は5月26日、心アミロイドーシスにおけるAIを活用した早期診断のためのコンソーシアム(「Integrated ATTRCM Partnership on AI Cardiac Technology(略称:IMPACT)」)を支援することを同月23日に決定したと発表しました。

このコンソーシアムは、熊本大学大学院生命科学研究部の辻田賢一教授が代表理事を務め、高知大学医学部の北岡裕章教授、株式会社コルバトヘルスの八木隆一郎CEOおよび後藤信一サイエンティフィックアドバイザーらが発起人となり、年内に設立される予定です。心アミロイドーシスにおける「診断ラグ」をAIで解消することを目的に、早期診断の実現に向けた環境整備などを産学協働で推進します。

心アミロイドーシスは、トランスサイレチン(TTR)というタンパク質が解離し、アミロイド線維となって心臓に沈着することで心筋症を引き起こす可能性がある、全身性の進行性疾患です。初期症状として心不全や不整脈などが現れますが、これらは加齢や他の心血管疾患と類似しており、鑑別が難しいことから誤診が多く、正確な確定診断までに時間がかかりやすい「診断ラグ」が課題となっています。症状は疲労、呼吸困難、下肢の腫れ、不整脈、手根管症候群、脊柱管狭窄症など多岐にわたります。診断が複雑なため、世界で推定30万から50万人の患者さんの多くは診断に至っていないと言われています。

日本国内の研究では、未治療の場合の生存期間中央値は診断後およそ3.8年と報告されており、診断までに3年から4年を要することもあるため、早期診断が患者の予後を大きく左右します。国内には未診断の患者が5万人から6万人規模で存在すると推測されています。

診断サポート技術は近年進展しており、AIは早期診断に向けた解決策として期待されています。しかし、日本におけるAIなどを活用した診断支援プログラム医療機器(SaMD)の普及は、海外と比較して改善の余地があると言われています。その背景には、日本市場導入における経済的インセンティブの弱さ、診断ツールの精度や費用対効果が十分に示されず医師の理解が得にくいこと、診療ガイドラインなどに組み込まれていないことといった課題が挙げられています。

コンソーシアムではこれらの課題克服のため、3つのワーキンググループ(WG)が設置されます。一つ目の「心エコーAI実装 WG」は、AIをエコー診断へ実装するための運用体制構築を検討します。二つ目の「認知度向上WG」は、医療現場や関連学会に対する認知・理解促進、教育・啓発活動を進めます。三つ目の「診断フローエビデンス創出 WG」は、実臨床に必要な診断に関するエビデンスを創出し、診断精度の向上と標準化を図る活動を行います。

アレクシオンファーマの濱村美砂子社長はプレスリリースにて、「心アミロイドーシス領域における新たな治療薬の開発を通じて、患者さんに革新的な治療をお届けできると期待しています。同時に、早期診断の実現に向けたイノベーションの重要性を深く認識しており、そのためのコンソーシアム支援は極めて意義深い取り組みであると考えます。早期診断の実現には、医療従事者、研究者、行政、企業など、多様なステークホルダーが連携し、診断精度の向上とアクセス改善に取り組むことが不可欠です。今回のコンソーシアム支援は、当社が推進する『患者中心主義』の理念と合致するものであり、患者さんに一日でも早く適切な診断と治療が届く未来の実現に向けて貢献してまいります」と述べています。

出典
アレクシオンファーマ合同会社 プレスリリース

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