FGF23 関連低リン血症性くる病・骨軟化症の新たなメカニズム「自己免疫性骨軟化症」を発見、未知の自己抗体の検出と確認の流れを確立
東京大学と金沢大学の研究グループは1月30日、国の指定難病であるFGF23 関連低リン血症性くる病・骨軟化症(指定難病名「ビタミン D 抵抗性くる病/骨軟化症」、小児慢性特定疾病対象疾病名「発性低リン血症性くる病」)の後天性の原因疾患の一部が自己免疫の異常であることを発見し、この新たな病態を「自己免疫性骨軟化症(autoimmune osteomalacia: AIO)」と命名したと発表しました。
くる病・骨軟化症は、主に血中リン濃度が持続的に低下すること(慢性低リン血症)で、骨の石灰化が妨げられることにより、骨が変形したり微細な骨折による痛みを生じたりする疾患です。子供でこれらの症状を発症する場合をくる病、大人でこれらの症状を発症する場合を骨軟化症といいます。
今回、研究グループは、原因不明の後天性FGF23 関連低リン血症性骨軟化症と判断された 13 名の患者さんの血液中に、この病気の発症に関連すると予想される自己抗体が存在するかを調べました。その結果、原因不明の後天性 FGF23 関連低リン血症性骨軟化症の患者さん 13 名のうち、5 名(38%)において PHEX タンパク質に対する自己抗体(抗 PHEX 自己抗体)が検出されました。このことから、腫瘍性骨軟化症の原因腫瘍が見つからず、原因不明とされてきた FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の一部は、PHEXというタンパク質に対する自己抗体によって引き起こされていることが明らかになりました。
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研究グループは、今回発見した自己免疫の異常によって骨軟化症を起こす新しい病態を「自己免疫性骨軟化症(autoimmune osteomalacia: AIO)」と命名。これは、従来の腫瘍性骨軟化症とは病気の成り立ちが異なるものだといいます。
今回の研究成果により、今後、後天性 FGF23 関連低リン血症性くる病・骨軟化症の迅速な診断法の確立や新たな治療法の開発に役立つことが期待されます。また、同研究で確立した未知の自己抗体の検出と確認の流れは、今後、様々な臨床分野における未解明の後天性疾患に対して応用することで、 新たな自己免疫疾患の発見に寄与する可能性があります。
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