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デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療薬ブロギジルセン、医師主導治験で画期的なジストロフィン回復を確認、有効性評価の新たな指標も

国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は1月10日、日本新薬株式会社と共同研究を進めてきたアンチセンス核酸医薬品であるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療薬ブロギジルセン(開発コード:NS-089/NCNP-02)を用いた医師主導治験(First In Human試験)の成果がCell Reports Medicine誌に掲載されたと発表しました。

デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、ジストロフィン遺伝子変異により、筋の細胞膜からジストロフィンタンパク質が失われ、徐々に筋力低下が進む疾患です。

ブロギジルセンは、NCNPと日本新薬が共同で開発した世界初のエクソン44スキップ薬です。モルフォリノ核酸が本来有する高い安全性に加えて、新規高活性配列探索法を用いて開発したデュアルターゲティング(配列連結型)モルフォリノ核酸製剤であり、高いエクソン・スキップ活性を有しています。これまでの非臨床試験の結果からは、エクソン44スキップに応答する変異形式のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者細胞における高い有効性が確認されていました。

今回の医師主導治験は、NCNP病院と鹿児島大学病院で6例のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者さんに対して行われ、主要評価項目である安全性の他、ブロギジルセン投与後の薬物動態、ジストロフィンタンパク質の発現確認、運動機能評価等の有効性について検討を行いました。デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者さんにブロギジルセンを全身投与した結果、平均20.55%のジストロフィンタンパク質の発現が認められました。

画像はリリースより

また、ノース・スター歩行能力評価スコアを含め、運動機能の維持又または改善傾向が示唆されました。これらの結果から同剤は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対する治療効果が期待されるといいます。今回の治験では、有害事象の発生による投与中止例はありませんでした。

さらに、すべての患者さんから尿の中に含まれる幹細胞(以下、尿中細胞)を採取し、ブロギジルセンの効果を検証したところ、実際の全身投与で有効だった患者さんでは、その尿中細胞由来の骨格筋細胞においても、同様に有効でジストロフィンの発現上昇がみられました。これまでの治験では、苦痛を伴う筋生検によって得られる骨格筋がエクソン・スキップ治療の有効性評価のためには必須でした。しかし、将来のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)関連の治験においても継続的に尿中細胞を用いた評価が有用であることが示せれば、苦痛のない尿中細胞を主要評価項目とする治験実施も期待されるといいます。

画像はリリースより

また、これまでデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対するエクソン・スキップ治療では、日常診療で使いやすい治療効果判定の血中マーカーは確立されていませんでしたが、今回の治験では、ブロギジルセンの投与前後の血漿を用いて、タンパク質の網羅的な発現解析を実施。その結果、以前よりデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)で高値であることが知られていたタイチン(TTN)、ミオメシン2(MYOM2)、ミオシン軽鎖PF(MYLPF)が、いずれもジストロフィンの回復に伴い、低下することが分かりました。さらに、繊毛神経栄養因子(CNTF)の上昇、プロテインアルギニンデイミナーゼ2型(PADI2)の低下もみられました。これらは、日常診療の治療反応性マーカーとなり、今後のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)関連治療薬の治験における測定項目となることが期待されるといいます。

画像はリリースより

出典
国立精神・神経医療研究センター(NCNP) プレスリリース

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