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自己免疫性膵炎が発症する際の免疫反応の全容を解明、新たな治療法開発に繋がる可能性

近畿大学の研究グループは9月27日、米国国立衛生研究所との共同研究により、指定難病である自己免疫性膵炎について、発症初期から完全に発症するまでの免疫反応の全容を解明したと発表しました。

IgG4関連疾患(指定難病300)のひとつである自己免疫性膵炎は、膵臓が大きく腫れて黄疸・腹痛を伴い、悪化と治癒を繰り返すことが特徴で、高齢男性に発症することが多い疾患です。国内の患者数は推定20,000人と言われ、発症メカニズムは未だに不明です。現在の治療法は、ステロイドを用いた免疫抑制による治療が主流ですが、ステロイドには多くの副作用があるうえ、再発も多く、新たな治療法の開発が求められています。

今回、研究グループは、自己免疫性膵炎の発症初期から完全発症に至るまでの免疫反応の全容解明をめざして、モデルマウスと、自己免疫性膵炎患者の血液を用いて解析を行いました。

初めに、作製した自己免疫性膵炎モデルマウスの膵臓における免疫反応を、発症前・発症早期・症状が進行した後期の段階で解析し、膵臓に集まる免疫細胞の種類と、免疫細胞が作るタンパク質であるサイトカインとケモカインを調べました。その結果、発症早期には「通常型樹状細胞」が特定のサイトカインとケモカインを放出し、これによりケモカインの受容体であるCXCR3が陽性のCD4T細胞を膵臓におびき寄せることがわかりました。CXCR3陽性CD4T細胞は、サイトカインを産生して膵臓にダメージを与える一方で、ケモカインを作り出し、さらにこのケモカインに反応してウイルスなどに対する感染防御免疫の誘導に重要なI型インターフェロンを産生する「形質細胞様樹状細胞」も膵臓に集まることを明らかにしました。

また、膵臓に集まった「形質細胞様樹状細胞」が、I型インターフェロンなどのタンパク質を大量に放出することで炎症が進行し、最終的に「CXCR3陽性CD4T細胞」と「形質細胞様樹状細胞」がお互いに活性化しあって、炎症が急激に進むことも明らかになりました。

画像はリリースより

最後に、自己免疫性膵炎・IgG4関連疾患患者の血液を用いた検討をした結果、活動期の自己免疫性膵炎・IgG4関連疾患では、血液中のI型IFN・CXCL9・CXCL10・CCL25が、健常人・慢性膵炎患者さんと比較して著明に上昇することがわかりました。また、ステロイドにより病気が改善すると、血液中のI型IFN・CXCL9・CXCL10・CCL25は著明に低下しました。

以上の研究成果より、通常型樹状細胞、形質細胞様樹状細胞、CXCR3陽性CD4T細胞が作り出すサイトカインとケモカインが、自己免疫性膵炎の新たな治療標的となることが示唆されました。この結果は、自己免疫性膵炎・IgG4関連疾患患者さんの発症メカニズムの解明や、新たな治療法開発に繋がる可能性があると期待されます。

なお、同研究の成果は、「JCI Insight」オンライン版に9月27日付で掲載されました。

出典
近畿大学 プレスリリース

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