大脳皮質におけるUBL3に対する35個の結合分子を同定、神経変性疾患に対する新たな治療標的となる可能性
東邦大学の研究グループは8月21日、大脳皮質において、新規翻訳後修飾因子ubiquitin-like 3(UBL3)に対する35個の結合分子を同定したと発表しました。そして、これら結合分子の中には、RNA代謝に関わる分子群が多数含まれていることを見出しました。さらに、UBL3に会合するRNA代謝に関わる分子群の中には神経変性疾患関連タンパク質FUS、HPRT1が含まれていることを証明しました。
がん細胞、神経細胞などほぼすべての細胞種から分泌される小型細胞外小胞(sEV)には、タンパク質やmRNAやmiRNAが含まれており、細胞間の伝播を仲介することから、新しい細胞間伝達シグナルとして注目されています。sEVを介した悪性タンパク質の伝搬は、がん転移や神経変性疾患に関与することが知られていますが、どのような機構で特定のタンパク質がエクソソームへ輸送されるのかは不明でした。
今回、研究グループは、神経細胞におけるUBL3の機能を探るために、ビオチンタグを付加したUBL3をαCaMKII プロモーター制御により前脳特異的に過剰発現するトランスジェニックマウスを作製。このマウスから大脳皮質を摘出し、ビオチンと特異的に結合するストレプトアビジンビーズを用いてビオチンUBL3を含むタンパク質複合体を精製し、網羅的プロテオミクス解析を実施しました。
その結果、新たに35個のUBL3結合タンパク質を同定。これら35個のUBL3結合タンパク質を解析したところ、RNA代謝に関わる分子群が統計的有意に含まれていることがわかりました。さらに、9個の分子がextracellular exosomeとアノテーションされている分子でした。
また、神経変性疾患変異データベースに登録されているRNA結合分子FUSとHPRT1、神経変性疾患のひとつであるハンチントン舞踏病に関与することが知られているLYPLA1が、UBL3結合分子として同定されていることに着目し、内在性UBL3を認識する抗体を使用した免疫沈降実験を実施。その結果、FUS、HPRT1、LYPLA1は内在性UBL3と有意に結合することが確認できました。
以上の研究成果より、今後、神経変性疾患の治療戦略として、UBL3のRNA代謝への寄与が新たな治療標的となることが期待されるといいます。
なお、同研究の成果は、「Molecular Brain」に8月15日付で掲載されました。