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ANCA関連血管炎の発症に関わる遺伝子を同定

筑波大学は、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎の発症リスクに関連する遺伝子を同定したと発表しました。本研究の結果はANCA関連血管炎と特発性肺線維症に共通した機構が潜んでいることを示唆しており、新たな治療法やバイオマーカー開発に繋がると期待されています。

抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎は近年患者数が増加している難治性の血管炎で、日本人では間質性肺疾患の合併率が高いことが知られます。腎臓や肺、皮膚などに存在する毛細血管の壁に炎症が起こり出血しやすく、また血栓ができやすいために様々な臓器の機能が著しく低下します。血液検査により好中球の細胞質に対する自己抗体がみられる特徴を持ちます。日本人では特に間質性肺炎を合併率が高く、遺伝的背景に起因すると考えられています。そこで本研究チームは、ANCA関連血管炎と間質性肺炎の合併に関わる遺伝子を探索しました。

本研究の遺伝子解析には544名のANCA関連血管炎患者と785名の健常対象者の遺伝子、さらに日本人多層オミックス参照パネル(jMorp)の4773名分のデータが用いられました。解析の結果、単独で発症する特発性肺線維症のリスクとの関連が知られる2種の遺伝子(TERT遺伝子、DSP遺伝子)は、ANCA関連血管炎のサブセットである顕微鏡的多発血管炎(MPA)とMPO-ANCA陽性群(MPO-AVV)の疾患感受性にも関連することが明らかになりました。いずれの遺伝子もANCA関連血管炎との関連が示された例はなく、新たな知見となりました。TERT遺伝子の変異はTERTタンパク質の発現低下とテロメアの短縮に関連することが、DSP遺伝子の変異は細胞同士の接着に重要なデスモプラキンの発現低下に関連することが報告されています。今後さらなる解析が進むことでANCA関連血管炎や、合併する特発性肺線維症の新たな治療法開発に繋がると期待されています。

出典元
筑波大学 プレスリリース

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