全身性エリテマトーデス(SLE)の発症を疾患特異的に抑制する仕組みを解明
東京医科歯科大学らは5月22日、新潟大学と日本大学歯学部との共同研究により、代表的な自己免疫疾患の1つ全身性エリテマトーデス(SLE)の発症を疾患特異的に抑制する仕組みを明らかにしたと発表しました。
自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(指定難病49)は、慢性疾患であり、継続的な治療が必要です。主にステロイド剤や免疫抑制剤による治療が行われていますが、これらの治療法は免疫の全般的な抑制や代謝の異常などの副作用があるため、疾患の病態に則した副作用のない治療法の開発が望まれています。
全身性エリテマトーデス(SLE)では、核酸や核酸を含む自己抗原に対する自己抗体が産生され、この自己抗体によって腎臓などの臓器の障害をきたします。Sm/RNPはRNAとタンパク質からなる自己抗原で、この中のSm分子への自己抗体は全身性エリテマトーデス(SLE)の疾患特異的な自己抗体です。全身性エリテマトーデス(SLE)ではSm/RNP以外のRNAを含む自己抗原への自己抗体も産生されますが、このような自己抗体の産生抑制の仕組みは明らかではありませんでした。
今回、研究グループは、Bリンパ球が発現する抑制性の膜分子「CD72」がリボソームに結合し、抗リボソーム抗体を産生するBリンパ球の活性化を抑制し、抗リボソーム自己抗体の産生を抑制することを明らかにしました。
以前、研究グループは、CD72がSm/RNPへの自己抗体産生を抑制することを明らかにしましたが、今回の研究成果と合わせて、CD72が複数のRNAを含む自己抗原への全身性エリテマトーデス(SLE)に特異的な自己抗体の産生を選択的に抑制することを明らかにしました。
この成果から、免疫反応全般を抑制する治療法とは異なり、CD72の機能増強などによって全身性エリテマトーデス(SLE)での自己免疫応答のみを抑制する、副作用のない全身性エリテマトーデス(SLE)の治療法の開発に繋がることが期待されます。
なお、同研究の成果は、国際科学誌「Journal of Autoimmunity」オンライン版に5月15日付で掲載されました。